日経サイエンス2009年4月号進化論大特集、病気の起源、驚異の昆虫 ― 2009年03月15日 01時40分05秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
---
一気に書けって感じで、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140812567/showshotcorne-22/
迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか (単行本)
シャロン モアレム (著), ジョナサン プリンス (著), Sharon Moalem (原著),
Jonathan Prince (原著), 矢野 真千子 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121018605/showshotcorne-22/
昆虫―驚異の微小脳 (中公新書) (新書)
水波 誠 (著)
が売れていたので、書いちゃう。
まず、「迷惑な進化」の関連。
ダーウィンの「種の起源」が出版されてから今年が150周年だそうで、それ
で日経サイエンス2009年4月号は、1冊丸ごと進化論の大特集です。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001RQ13CU/showshotcorne-22/
日経サイエンス2009年4月号
目次は、
http://www.nikkei-science.com/item.php?did=55904
をどうぞ。
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0904/200904_050.html
特集:進化する進化論 解剖学
この古き身体 人がしゃっくりに悩むわけ
N. H. シュービン(シカゴ大学)
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0904/200904_056.html
特集:進化する進化論 ダーウィン医学
人間の由来と病気
高畑尚之(総合研究大学院大学)
が、人体の進化と病気の起源に関する話です。
人間の多くの病気は、進化の産物なんだって。進化は、つぎはぎだらけ。だ
から、最初からきれいなデザインになってるわけじゃない。そこが病気になる
原因になっていると。
ヘルニアやしゃっくりもそうだし、おれ、全然知らなかったけど、日本人は
牛乳をコップ1杯以上飲むと、お腹をこわす人が多いでしょ(乳糖不耐性下痢
症)。これは、乳糖(ラクトース)を分解する酵素の遺伝子LCTのせいだそうです。
赤ちゃんのころは、この遺伝子が発現しているから、乳糖を分解できるけど、
大人になるにつれ、LCTが発現しないようになるんだって。ところが北アフリ
カ、ヨーロッパや中近東など、酪農文化が発達している地域の人たちは、大人
になってもLCTが発現していて、乳糖を分解できるから、お腹をこわさないん
だって。
乳糖不耐性になるのが祖先型で、乳糖を分解できるのがあとから進化したタ
イプであることがわかっているそうです。
同趣旨の本だと思うけれど、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/433403358X/showshotcorne-22/
人体 失敗の進化史 (光文社新書) (新書)
遠藤 秀紀 (著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/406257537X/showshotcorne-22/
「退化」の進化学 (ブル-バックス) (新書)
犬塚 則久 (著)
というのもありますね。
最初からきれいなデザインになってないということは、最近流行?のインテ
リジェント・デザイン説への反論になってると思うけどね。
公立学校で進化論を教えるなとか、インテリジェント・デザインなどの反科
学的な宗教勢力のプロパガンダ、政治力の行使がいまだに続いているのがよく
わかるのが、
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0904/200904_098.html
特集:進化する進化論 米国事情
創造説のナンセンスな変異
G. ブランチ/E. C. スコット(全米科学教育センター)
アメリカって、こういう面ではひどいね。宗教の仮面をかぶって、わざとま
ともな知識を教えないことで、無知蒙昧の状態にとどめて、貧困層を貧困のま
ま、富裕層はますます富むようにしている政治的な動きに思えるね。
人間の起源と歴史についてイラストで解説してあるのが、
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0904/200904_046.html
特集:進化する進化論 系統樹
人類の系図
K. ウォン(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)
イラスト:V. ディーク
そして、未来の人間がどうなるかのさまざま予測が書いてあるのが、
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0904/200904_064.html
特集:進化する進化論 進化の未来
加速する人類進化 未来のホモ・サピエンスは?
P. ウォード(ワシントン大学)
関連した新書としては、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061498053/showshotcorne-22/
人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」 (講談社現代新書) (新書)
三井 誠 (著)
がありますね。
前述のようにアメリカではいまだに進化論に対して根強い政治的攻撃があり
ますが、日本で、進化論がすんなり受け入れられたのはなぜかという話と、い
ろんな系統樹や分類学の話題が出ているのが、連載「茂木健一郎と愉しむ科学
のクオリア」の「世界を束ねる進化の系統樹/三中信宏(農業環境技術研究所)
」
三中(みなか)さん、進化生物学が専門で、系統樹コレクターです。
分類学と系統学の違いの話も興味深い。世界をどうモデル化するかという意
味では、ソフトウェアの世界と同じ。コンピュータのソフトは、現実世界をな
んとかモデル化してコンピュータでいろいろいじくる手段を提供しているわけ
で、分類学、系統学の話は、オブジェクト指向的な考え方、もっといえば、オ
ントロジーの世界とつながっていますね。生命科学も、遺伝子のオントロジー
を作ったり、その辺で、いろいろ苦労しているもんね。
ダーウィンは、「ビッグブック」(ビッグ・スピーシーズ・ブック)と呼ばれ
る「種の起源」の元になる本を書いているそうです。それを「種の起源」と対
比させていくと、「種の起源」が「ビッグブック」の要約版であることがわか
るそうです。
三中さんの本は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061498495/showshotcorne-22/
系統樹思考の世界 (講談社現代新書) (新書)
三中 信宏 (著)
がありますね。
おれ、「種の起源」なんて読んでないけど、岩波が定番でしょうね。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4003391241/showshotcorne-22/
種の起原〈上〉 (岩波文庫) (文庫)
チャールズ ダーウィン (著), 八杉 龍一 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/400339125X/showshotcorne-22/
種の起原〈下〉 (岩波文庫) (文庫)
チャールズ ダーウィン (著), 八杉 龍一 (翻訳)
上下合わせて、850ページでしょ。これで要約だというんだから、「ビッグ・
ブック」というのはどれほどすごいんでしょうか。^^;
三中さんによれば、ほんとにすごいらしいです。ダーウィンが進化論を思い
ついてから、「種の起源」を出版するまでの雌伏の20年間にこんなすごいこと
をやっていたんだと。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4487761662/showshotcorne-22/
新版・図説 種の起源 (単行本)
チャールズ ダーウィン (著), リャード リーキー (編集), Charles Darwin
(原著), Richard Leakey (原著), 吉岡 晶子 (翻訳)
の素人評。
水幡正蔵 "sayonara1859" さんは、「「種」を定義しない『種の起源』は根
源的に誤り!」と書いてるけど、これに関連したことでいえば、三中さんは、
豪快なことを述べています。
種はあるのか。認知的な問題(これが深い問題。哲学的な問題)があるから、
完全な「種」の概念は得られないというのが、三中さんの考え。
--- ここから ---
茂木 亜種というのは、生物学的な定義はできるんですか。
三中 いえ、何しろ「種」自体が定義できませんからね。私がよく言うのは、
「種というのは幻想です。亜種に至っては妄想ですと」(笑)。
茂木 種というものの存在が認知的だといわれると、経験的には納得します。
(以下、略)
--- ここまで ---
広告もダーウィンにちなんだものが入っています。
ダーウィンの研究と家族、特に早世した長女アニーの影響を追った本が、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4891731109/showshotcorne-22/
ダーウィンと家族の絆―長女アニーとその早すぎる死が進化論を生んだ(単行本)
ランドル ケインズ(著), Randal Keynes(原著), 渡辺 政隆(翻訳), 松下 展子(翻訳)
まえがきや目次などは、白日社のサイトにあります。
http://www.hakujitsusha.co.jp/hakujitsusha/4-89173-110-9.html
ダーウィンと家族の絆―長女アニーとその早すぎる死が進化論を生んだ
をどうぞ。
「種の起源」の解説書は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4759811702/showshotcorne-22/
ダーウィン『種の起源』を読む (単行本)
北村 雄一 (著)
目次などは、化学同人社のサイトにあります。
http://www.kagakudojin.co.jp/library/ISBN978-4-7598-1170-4.htm
をどうぞ。
著者のサポートページは、
http://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili/rireki/syuno-kigen-yomu.html
をどうぞ。
あと、この号の日経サイエンスで特に面白かったのが、冒頭のNEWS SCAN欄
にある「不滅の量子効果」。
http://www.nikkei-science.com/topics/bn0904_1.html#1
に全文がありますね。
量子もつれ状態の光子の片方を照射して、反射光の中から量子もつれ状態
の光子だけを選び出す量子照明が実用化されれば、レーダーやX線装置、光通
信、顕微鏡の感度をいまより100万倍も上げられるというのもすごいけど、量
子照明の実力を完全に引き出すには、すべての量子もつれが破壊される必要が
あるというのが、とても不思議な話ですね。
量子の世界は、人間の常識や直観にそぐわない不思議に満ちてますね。
このロイド先生は、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/05/11/3501288
「書く」ことへの欲求
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/03/01/2677368
多世界解釈、量子コンピュータ、日経サイエンス2008年04月号
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/08/21/3701716
へんな数式美術館その2
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/02/07/2607997
Java版Prologリンク集、Prolog、オントロジーなどのチュートリアル集
で名前を出した
http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0502/space.html
S. ロイド/Y. J. エン「計算する時空 量子情報科学から見た宇宙」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152088729/showshotcorne-22/
セス・ロイド著, 水谷淳訳「宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算す
る宇宙」は複雑な世界を創ったか?」
のロイド先生です。
さっき、世界をコンピュータのソフトは、現実のモデル化をやってうんぬん
と書きましたが、非常に限定的なモデル化をやってることは、みんな、知って
ると思います。だから、現実、そのものじゃない。
ところがですね。
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/02/14/2626434
GRAPE本、杉本大一郎著「手作りスーパーコンピュータへの挑戦」と「シミュ
レーション天文学」
で書いたように、杉本大一郎さんなんか、現実丸ごとシミュレーションしよう
と本気で思ってる。\(^O^)/
で、ロイド先生。この人が量子コンピュータを研究しているのはなぜか。
我々の宇宙は、量子の法則によって支配されている量子宇宙である。
宇宙規模の量子コンピュータがあれば、宇宙そのものをシミュレートできる。
この汎用量子シミュレータでシミュレートされた宇宙は、我々には現実と区
別できない。
逆に、いま我々が住む宇宙を、量子計算をしている汎用量子シミュレータと
みなすことも可能。
宇宙の始まりがどうだったのかと、超ひも理論(超弦理論)などであれこれや
っているが、量子コンピュータを作って、宇宙そのものを作ってしまうほうが
話が早い。\(^O^)/
だから、量子コンピュータを研究しているんだ。\(^O^)/
大体、こういう話を「宇宙をプログラムする宇宙」で述べています。
すごいねえ。
「汎用量子シミュレータでシミュレートされた宇宙は、現実と区別できない」
を真似れば、「理論武装した狂人は、天才と区別できない」\(^O^)/
おっとろしかこつばい、鮎原さん。
それと、最後のほうのTREND欄にある「三変化する深海魚を再発見」。
不思議な深海魚として知られていた魚の、数十年にわたる謎がやっと解けた
そうです。
その深海魚は、リボンイワシ、ソコクジラウオ、クジラウオ。従来、これは
科が違う3つの別の深海魚に分類されていたけれど、実は同じ魚だったと。
子供のころがリボンイワシ。大人のオスがソコクジラウオ、大人のメスがク
ジラウオ。メスが異常にでかい。自然界は、やっぱり子供を作れるメスこそ偉
いのね。
写真も載っているけれど、とても同じ種類の魚とは思えないほど、全然、違
う。大きさも違うし、長い尾があったりなかったり、ウロコがあったりなかっ
たり。
これ、元々はミトコンドリアDNA解析をした日本人研究者、千葉県中央博物
館の宮正樹(みや・まさき)上席研究員の発見なんだけど、決定的な証拠となる
写真を撮ってなかったこともあって、2003年に論文発表したけれど、全然信じ
てもらえなかった。
なかなか採取できない深海魚だから、世界中に呼びかけて、やっとこ34個の
サンプルが集まって、それでDNA解析をして決定的なものになったそうです。
それでやっとこの分野の大御所たちも納得してくれて、今年になって共同で
発表したら、大反響で、海外メディアが報じたそうです。
長くなったし、もう時間がないので、「昆虫―驚異の微小脳」の関連は、ま
たいつかね。
---
一気に書けって感じで、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140812567/showshotcorne-22/
迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか (単行本)
シャロン モアレム (著), ジョナサン プリンス (著), Sharon Moalem (原著),
Jonathan Prince (原著), 矢野 真千子 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121018605/showshotcorne-22/
昆虫―驚異の微小脳 (中公新書) (新書)
水波 誠 (著)
が売れていたので、書いちゃう。
まず、「迷惑な進化」の関連。
ダーウィンの「種の起源」が出版されてから今年が150周年だそうで、それ
で日経サイエンス2009年4月号は、1冊丸ごと進化論の大特集です。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001RQ13CU/showshotcorne-22/
日経サイエンス2009年4月号
目次は、
http://www.nikkei-science.com/item.php?did=55904
をどうぞ。
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0904/200904_050.html
特集:進化する進化論 解剖学
この古き身体 人がしゃっくりに悩むわけ
N. H. シュービン(シカゴ大学)
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0904/200904_056.html
特集:進化する進化論 ダーウィン医学
人間の由来と病気
高畑尚之(総合研究大学院大学)
が、人体の進化と病気の起源に関する話です。
人間の多くの病気は、進化の産物なんだって。進化は、つぎはぎだらけ。だ
から、最初からきれいなデザインになってるわけじゃない。そこが病気になる
原因になっていると。
ヘルニアやしゃっくりもそうだし、おれ、全然知らなかったけど、日本人は
牛乳をコップ1杯以上飲むと、お腹をこわす人が多いでしょ(乳糖不耐性下痢
症)。これは、乳糖(ラクトース)を分解する酵素の遺伝子LCTのせいだそうです。
赤ちゃんのころは、この遺伝子が発現しているから、乳糖を分解できるけど、
大人になるにつれ、LCTが発現しないようになるんだって。ところが北アフリ
カ、ヨーロッパや中近東など、酪農文化が発達している地域の人たちは、大人
になってもLCTが発現していて、乳糖を分解できるから、お腹をこわさないん
だって。
乳糖不耐性になるのが祖先型で、乳糖を分解できるのがあとから進化したタ
イプであることがわかっているそうです。
同趣旨の本だと思うけれど、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/433403358X/showshotcorne-22/
人体 失敗の進化史 (光文社新書) (新書)
遠藤 秀紀 (著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/406257537X/showshotcorne-22/
「退化」の進化学 (ブル-バックス) (新書)
犬塚 則久 (著)
というのもありますね。
最初からきれいなデザインになってないということは、最近流行?のインテ
リジェント・デザイン説への反論になってると思うけどね。
公立学校で進化論を教えるなとか、インテリジェント・デザインなどの反科
学的な宗教勢力のプロパガンダ、政治力の行使がいまだに続いているのがよく
わかるのが、
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0904/200904_098.html
特集:進化する進化論 米国事情
創造説のナンセンスな変異
G. ブランチ/E. C. スコット(全米科学教育センター)
アメリカって、こういう面ではひどいね。宗教の仮面をかぶって、わざとま
ともな知識を教えないことで、無知蒙昧の状態にとどめて、貧困層を貧困のま
ま、富裕層はますます富むようにしている政治的な動きに思えるね。
人間の起源と歴史についてイラストで解説してあるのが、
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0904/200904_046.html
特集:進化する進化論 系統樹
人類の系図
K. ウォン(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)
イラスト:V. ディーク
そして、未来の人間がどうなるかのさまざま予測が書いてあるのが、
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0904/200904_064.html
特集:進化する進化論 進化の未来
加速する人類進化 未来のホモ・サピエンスは?
P. ウォード(ワシントン大学)
関連した新書としては、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061498053/showshotcorne-22/
人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」 (講談社現代新書) (新書)
三井 誠 (著)
がありますね。
前述のようにアメリカではいまだに進化論に対して根強い政治的攻撃があり
ますが、日本で、進化論がすんなり受け入れられたのはなぜかという話と、い
ろんな系統樹や分類学の話題が出ているのが、連載「茂木健一郎と愉しむ科学
のクオリア」の「世界を束ねる進化の系統樹/三中信宏(農業環境技術研究所)
」
三中(みなか)さん、進化生物学が専門で、系統樹コレクターです。
分類学と系統学の違いの話も興味深い。世界をどうモデル化するかという意
味では、ソフトウェアの世界と同じ。コンピュータのソフトは、現実世界をな
んとかモデル化してコンピュータでいろいろいじくる手段を提供しているわけ
で、分類学、系統学の話は、オブジェクト指向的な考え方、もっといえば、オ
ントロジーの世界とつながっていますね。生命科学も、遺伝子のオントロジー
を作ったり、その辺で、いろいろ苦労しているもんね。
ダーウィンは、「ビッグブック」(ビッグ・スピーシーズ・ブック)と呼ばれ
る「種の起源」の元になる本を書いているそうです。それを「種の起源」と対
比させていくと、「種の起源」が「ビッグブック」の要約版であることがわか
るそうです。
三中さんの本は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061498495/showshotcorne-22/
系統樹思考の世界 (講談社現代新書) (新書)
三中 信宏 (著)
がありますね。
おれ、「種の起源」なんて読んでないけど、岩波が定番でしょうね。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4003391241/showshotcorne-22/
種の起原〈上〉 (岩波文庫) (文庫)
チャールズ ダーウィン (著), 八杉 龍一 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/400339125X/showshotcorne-22/
種の起原〈下〉 (岩波文庫) (文庫)
チャールズ ダーウィン (著), 八杉 龍一 (翻訳)
上下合わせて、850ページでしょ。これで要約だというんだから、「ビッグ・
ブック」というのはどれほどすごいんでしょうか。^^;
三中さんによれば、ほんとにすごいらしいです。ダーウィンが進化論を思い
ついてから、「種の起源」を出版するまでの雌伏の20年間にこんなすごいこと
をやっていたんだと。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4487761662/showshotcorne-22/
新版・図説 種の起源 (単行本)
チャールズ ダーウィン (著), リャード リーキー (編集), Charles Darwin
(原著), Richard Leakey (原著), 吉岡 晶子 (翻訳)
の素人評。
水幡正蔵 "sayonara1859" さんは、「「種」を定義しない『種の起源』は根
源的に誤り!」と書いてるけど、これに関連したことでいえば、三中さんは、
豪快なことを述べています。
種はあるのか。認知的な問題(これが深い問題。哲学的な問題)があるから、
完全な「種」の概念は得られないというのが、三中さんの考え。
--- ここから ---
茂木 亜種というのは、生物学的な定義はできるんですか。
三中 いえ、何しろ「種」自体が定義できませんからね。私がよく言うのは、
「種というのは幻想です。亜種に至っては妄想ですと」(笑)。
茂木 種というものの存在が認知的だといわれると、経験的には納得します。
(以下、略)
--- ここまで ---
広告もダーウィンにちなんだものが入っています。
ダーウィンの研究と家族、特に早世した長女アニーの影響を追った本が、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4891731109/showshotcorne-22/
ダーウィンと家族の絆―長女アニーとその早すぎる死が進化論を生んだ(単行本)
ランドル ケインズ(著), Randal Keynes(原著), 渡辺 政隆(翻訳), 松下 展子(翻訳)
まえがきや目次などは、白日社のサイトにあります。
http://www.hakujitsusha.co.jp/hakujitsusha/4-89173-110-9.html
ダーウィンと家族の絆―長女アニーとその早すぎる死が進化論を生んだ
をどうぞ。
「種の起源」の解説書は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4759811702/showshotcorne-22/
ダーウィン『種の起源』を読む (単行本)
北村 雄一 (著)
目次などは、化学同人社のサイトにあります。
http://www.kagakudojin.co.jp/library/ISBN978-4-7598-1170-4.htm
をどうぞ。
著者のサポートページは、
http://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili/rireki/syuno-kigen-yomu.html
をどうぞ。
あと、この号の日経サイエンスで特に面白かったのが、冒頭のNEWS SCAN欄
にある「不滅の量子効果」。
http://www.nikkei-science.com/topics/bn0904_1.html#1
に全文がありますね。
量子もつれ状態の光子の片方を照射して、反射光の中から量子もつれ状態
の光子だけを選び出す量子照明が実用化されれば、レーダーやX線装置、光通
信、顕微鏡の感度をいまより100万倍も上げられるというのもすごいけど、量
子照明の実力を完全に引き出すには、すべての量子もつれが破壊される必要が
あるというのが、とても不思議な話ですね。
量子の世界は、人間の常識や直観にそぐわない不思議に満ちてますね。
このロイド先生は、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/05/11/3501288
「書く」ことへの欲求
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/03/01/2677368
多世界解釈、量子コンピュータ、日経サイエンス2008年04月号
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/08/21/3701716
へんな数式美術館その2
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/02/07/2607997
Java版Prologリンク集、Prolog、オントロジーなどのチュートリアル集
で名前を出した
http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0502/space.html
S. ロイド/Y. J. エン「計算する時空 量子情報科学から見た宇宙」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152088729/showshotcorne-22/
セス・ロイド著, 水谷淳訳「宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算す
る宇宙」は複雑な世界を創ったか?」
のロイド先生です。
さっき、世界をコンピュータのソフトは、現実のモデル化をやってうんぬん
と書きましたが、非常に限定的なモデル化をやってることは、みんな、知って
ると思います。だから、現実、そのものじゃない。
ところがですね。
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/02/14/2626434
GRAPE本、杉本大一郎著「手作りスーパーコンピュータへの挑戦」と「シミュ
レーション天文学」
で書いたように、杉本大一郎さんなんか、現実丸ごとシミュレーションしよう
と本気で思ってる。\(^O^)/
で、ロイド先生。この人が量子コンピュータを研究しているのはなぜか。
我々の宇宙は、量子の法則によって支配されている量子宇宙である。
宇宙規模の量子コンピュータがあれば、宇宙そのものをシミュレートできる。
この汎用量子シミュレータでシミュレートされた宇宙は、我々には現実と区
別できない。
逆に、いま我々が住む宇宙を、量子計算をしている汎用量子シミュレータと
みなすことも可能。
宇宙の始まりがどうだったのかと、超ひも理論(超弦理論)などであれこれや
っているが、量子コンピュータを作って、宇宙そのものを作ってしまうほうが
話が早い。\(^O^)/
だから、量子コンピュータを研究しているんだ。\(^O^)/
大体、こういう話を「宇宙をプログラムする宇宙」で述べています。
すごいねえ。
「汎用量子シミュレータでシミュレートされた宇宙は、現実と区別できない」
を真似れば、「理論武装した狂人は、天才と区別できない」\(^O^)/
おっとろしかこつばい、鮎原さん。
それと、最後のほうのTREND欄にある「三変化する深海魚を再発見」。
不思議な深海魚として知られていた魚の、数十年にわたる謎がやっと解けた
そうです。
その深海魚は、リボンイワシ、ソコクジラウオ、クジラウオ。従来、これは
科が違う3つの別の深海魚に分類されていたけれど、実は同じ魚だったと。
子供のころがリボンイワシ。大人のオスがソコクジラウオ、大人のメスがク
ジラウオ。メスが異常にでかい。自然界は、やっぱり子供を作れるメスこそ偉
いのね。
写真も載っているけれど、とても同じ種類の魚とは思えないほど、全然、違
う。大きさも違うし、長い尾があったりなかったり、ウロコがあったりなかっ
たり。
これ、元々はミトコンドリアDNA解析をした日本人研究者、千葉県中央博物
館の宮正樹(みや・まさき)上席研究員の発見なんだけど、決定的な証拠となる
写真を撮ってなかったこともあって、2003年に論文発表したけれど、全然信じ
てもらえなかった。
なかなか採取できない深海魚だから、世界中に呼びかけて、やっとこ34個の
サンプルが集まって、それでDNA解析をして決定的なものになったそうです。
それでやっとこの分野の大御所たちも納得してくれて、今年になって共同で
発表したら、大反響で、海外メディアが報じたそうです。
長くなったし、もう時間がないので、「昆虫―驚異の微小脳」の関連は、ま
たいつかね。
コメント
_ ワープロソフト松からの密かな大フアン ― 2009年03月15日 16時56分30秒
_ こがらし ― 2009年03月15日 22時35分13秒
『エレガントな宇宙』 の著者、ブライアン・グリーンの新しい本 『宇宙を織りなすもの』(上・下) が出ましたね。
http://www.amazon.co.jp/dp/4794217005
1冊本で安く手軽に読みたい人には、原書でもペーパーバックの方が良いかも。
(本書についての Amazon の解説は、こちらの方が詳しいですね)
http://www.amazon.co.jp/dp/0141035293
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_ ホットコーナーの舞台裏 - 2009年03月19日 06時21分57秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2009/03/13/
ねこ耳少女の量子論 萌える最新物理
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2009/03/13/
ねこ耳少女の量子論 萌える最新物理
_ ホットコーナーの舞台裏 - 2009年08月01日 05時43分49秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2009/07/04/4412062
「はじめての現代数学」・・・
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2009/07/04/4412062
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_ ホットコーナーの舞台裏 - 2009年09月25日 09時08分21秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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この前、やっと
http://iiyu.asablo.jp/blog/2009/09/18/4583880
日経サイエ
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この前、やっと
http://iiyu.asablo.jp/blog/2009/09/18/4583880
日経サイエ
_ ホットコーナーの舞台裏 - 2009年12月23日 06時28分16秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2009/12/22/4769193
Googleの全貌その2
で、
http://
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2009/12/22/4769193
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_ ホットコーナーの舞台裏 - 2010年04月27日 05時22分29秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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化学系が苦手なので、ブルーバックスのその方面を紹介するこ
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化学系が苦手なので、ブルーバックスのその方面を紹介するこ
_ ホットコーナーの舞台裏 - 2010年09月30日 00時30分39秒
ASAHIネット(http://asahi-net.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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ここのところ、生物学関係、医学関係の本がよく売れているので、
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_ ホットコーナーの舞台裏 - 2011年07月19日 10時09分09秒
ASAHIネット(http://asahi-net.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/07/18/5961959
オルガスムスのウソ、オルガスム、
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_ ホットコーナーの舞台裏 - 2012年06月15日 09時32分24秒
ASAHIネット(http://asahi-net.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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あるところのセミナーで、
九州大学大学院 システム情報科学研究
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あるところのセミナーで、
九州大学大学院 システム情報科学研究
_ ホットコーナーの舞台裏 - 2014年02月27日 10時41分25秒
ASAHIネット(http://asahi-net.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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お買い上げありがとうございます。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4
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_ ホットコーナーの舞台裏 - 2014年08月03日 23時59分40秒
ASAHIネット(http://asahi-net.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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https://twitter.com/shownakamura/status/493549412082130945
--- ここから ---
トポロジ
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僭越ながらのカキコミで恐縮です。