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数学の広場、手を動かす幾何学、小平邦彦「幾何への誘い」2010年02月15日 10時08分35秒

ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
---
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/01/13/4809715
スピログラフ
を書いたとき、
http://www.geocities.jp/sgwr0/sp/sp.html
サイクロイドとスピログラフ
を紹介したが、ここの親リンクである菅原民生氏による
http://www.geocities.jp/sgwr0/index.html
数学の広場
がとても面白かった。
 菅原氏は、長崎大学教育学部の教授だった方なんですね。
http://www.geocities.jp/sgwr0/kansoubun/kika1.html
「幾何学1」の感想文
は、とりわけ面白い。
 公式の丸暗記なんて、まったく無意味とはいわないけれど、それが出てきた
プロセスを理解してないなら、ほとんど意味なし。
 特にいまは、公式集なんてネットにあふれているし、MathematicaやMaxima
やSやらRやらなんやらの数式処理ソフトを使えば、計算までしてくれるんだか
ら。
 勝間和代などのカモリーマン向けの本を読む奴はバカだと断言できるのは、
これらの本が、いわば公式の羅列だから。それが出てくるプロセスが重要なの
に、勝間和代は、著者もプロセスを理解できてない有様だから、公式をつまみ
食いして寄せ集めるしかできない。それでカモリーマン向けの本が作られてい
る。それを読んで、どれだけの意味があるのか。筋が悪いというのはそういう
こと。
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/01/10/4806223
Re: 高校数学基礎、「数学センスをみがこう」など秋山仁の数学入門本
で書いた、ソフトウェア工学がプロセス指向になった話と同じです。
 上記、感想文を読むと、学生は、そのことに気づいたわけ。そして、彼らが
教師になったときに、ちゃんと教えないといけないと考え始めたわけ。
 それにしても、初等幾何をしっかり自分で手を動かして学ぶのは、教育効果
がすごく高いね。人間の脳と身体性、そして何より心に非常に効きますね。
 これもまた、上記「スピログラフ」で、
--- ここから ---
 数学教育における初等幾何の重要性は、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2009/12/07/4744912
続第59回東レ科学講演会。折り紙工学、ホログラフィックニューラルネットワ
ーク、DNAロボットなどなど
で、ちょこっとだけ紹介した
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4006000073/showshotcorne-22/
幾何への誘い (岩波現代文庫―学術) (文庫)
小平 邦彦 (著)
ともつながりますね。
--- ここまで ---
と同じ話ね。

http://www.geocities.jp/sgwr0/cone/cone.html
錐形と双対錐形
にある「頂点周りの曲率がガウス写像でできる曲面上の表面積で定義できる」
というのは、ブラックホールのエントロピーの話にそっくり。
 そうなんですか?>教えて、偉い人。
http://www.geocities.jp/sgwr0/gityuu/gityuu.html
擬柱の体積
というのは、面白いですね。そもそも擬柱という言葉、初めて聞いた。
http://sekouchishiki.ichi-ichi.info/modules/sekou/02_01sokuryou.html
建築の基礎知識
には、擬柱公式による体積の計算が出てますね。

 せっかく話がつながったから、小平邦彦「幾何への誘い」のことをもうちょ
っと。
 「幾何への誘い」は、元々、1991年10月に岩波書店から出て、上記アマゾン
のリンクは、それが2000年に岩波現代文庫に入ったもの。
 岩波市民講座での講義が元になっていて、一般市民向けの幾何学入門。
 小平先生は、数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞を受賞した大先生で
すが、嘆いてるの。現代日本の教育で、旧制中学時代にあった平面幾何がすい
ぶん軽んじられていることに。おれがみるところ、昔の数学の教え方は、現代
数学の視点からすると野蛮で欠陥品だという感じなんです。ユークリッド幾何
学的な点や直線の定義にしろ、あれこれ、テキトーで、それじゃいかんと。だ
から、昔のやり方をやめたと。
 ところが、それによって、幾何学が高校生までの数学の初心者にとって、身
近に感じられないものになってしまい、平面幾何で定規とコンパスを使って自
分で手を動かして理解していく、そのことで論理的思考を養ったり、数学的セ
ンスを養ったりすることが難しくなったと。
 平面幾何は定規とコンパスでやる自然科学なんだと。それがおろそかになっ
たから、数学好きも減り、理科好きも減り、科学立国日本、技術立国日本も危
うくなってきていると。
 ざっとこんな主張です。

 35年前から40年くらい前のおれらの中学、高校時代って、もう、小平先生が
批判する教え方だったのかな。
 集合というのがとても大事という話は、小学校高学年の頃か、中学の頃にど
の先生だったか忘れたが、おっしゃっていた記憶はあり、あの頃、集合の考え
方が、数学教育にだいぶ入ってきた気がするのね。
 そのときに、平面幾何もだいぶ減らされたんだと思う。それでも、ずいぶん、
定規とコンパスであれこれ作図しましたけどね。旧制中学のは、もっとすごか
ったんでしょうね。
 小平先生が平面幾何を習ったとき、先生は、数学とはすごく厳密な学問だと
感じたそうです。ところが、後に現代数学を学ぶと、実は、あの平面幾何は、
いろいろといい加減だったことがわかるわけ。しかし、それでもなお、平面幾
何は、数学の初等教育に非常に有効だというわけ。
 平面幾何が論理的思考力を養うのに有効なこと、そして理解しやすいことは、
実感としてよくわかる。
 ここでいう平面幾何は、定規とコンパスを使って、補助線を引いたりして、
この角とあの角が同じだから、この三角形とあの三角形は合同。よって、この
辺の長さがああなって、結果として、この部分の面積はこうなるといった、あ
れです、あれ。
 平面幾何がいいのは、何より、目で見てすぐわかること。こことここの角度
が同じなら、これは二等辺三角形だから、この辺とこの辺は同じ長さだよねな
んて、すぐわかる。
 論理の展開は厳密です。理詰めでやっていかないと証明できない。論理の展
開が目で見てよくわかるから、途中、おかしいことにもすぐ気がつく。だから、
論理的思考力が身に付く。この論理展開のところが、若き小平先生には、非常
に厳密な科学性を感じさせたんだね。

 小平先生が旧制中学だったときの標準的な教科書は、大正15年に出た掛谷宗
一「新定 平面幾何」(大日本図書)、参考書は、大正9年に出た秋山武太郎
「わかる幾何学」(高岡書店)。「幾何への誘い」によれば、「わかる幾何学」
は百数十版を重ねた名著で、一度、絶版になったが、昭和34年(おお、おれが
生まれた年だ)に、日新出版から復刊されたとのこと。
 はうあ!
 あるある。掛谷宗一「新定 平面幾何」は、アマゾンにないけれど、「わか
る幾何学」はありますね。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/481730006X/showshotcorne-22/
わかる幾何学 (わかる数学全書 (3)) (単行本)
秋山 武太郎 (著), 春日屋 伸昌
 ちゃんと関連書に、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4006000073/showshotcorne-22/
幾何への誘い (岩波現代文庫―学術) (文庫)
が出てますね。
 「幾何への誘い」を読んだ人が、探して購入するんでしょうね。わかるわか
る。一度、見てみたいと思うもん。
 「幾何への誘い」の第1章は、「わかる幾何学」を使って、旧制中学の平面
幾何の勉強がどういうものだったかを示したもの。
 「わかる幾何学」は、豪快なんです。点の定義、直線の厳密な定義、小難し
い話は、哲学者にでも任せておいて、おれたちは、定規とコンパスでがしがし
作図して勉強しようぜなんてことが、書いてあるわけ。ほんとに、「こんなこ
とはどうでもよい。次の定義もどうでもよい」などと書いてあるんです。
 たしかに野蛮といえば、野蛮ですよね。^^;
 第2章は、逆に現代数学の巨人ヒルベルトの公理主義による平面幾何をやり
ながら、現代数学の目からみると、第1章のユークリッド的平面幾何がどうい
う問題があると思われているのかを示しています。
 第3章は、複素数と幾何の関係。複素平面、いわゆるガウス平面を使って複
素数の幾何学的性質を調べて、複素数の理解を深める趣向です。
 上野健爾氏による解説も素晴らしくて、単元毎に分解した数学教育では、数
学の各分野の有機的なつながりがみえてこない。小平先生は、初等教育におけ
る数学の現代化に批判的で、平面幾何はそれを是正するのにいい教材だという
のが、よくわかる解説です。
 この解説には、和算の話も出ています。ユークリッドの原論の平面幾何の部
分は中国語訳として「幾何原本」があって、江戸時代に日本にも入ってきたそ
うです。しかし、日本の和算家たちは、当たり前のことを議論しているだけで
程度が低いといって軽んじたそうです。
 個別の公式をみて、なんだ、こんなものは知ってるよと思ってしまって、公
理と論理によって数学を発展させていくという手法そのものの偉大さを理解で
きなかった。それが和算の限界だったと。和算が廃れる原因になったんですね。
 これも、先に述べた、プロセスを理解しようとしない悲劇ですね。

関連:
http://iiyu.asablo.jp/blog/2006/01/21/220708
ちくま学芸文庫 Math & Science
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/07/09/3617104
ちくま学芸文庫 Math & Scienceやら物理学の名著が続々復刊
http://iiyu.asablo.jp/blog/2009/01/11/4052892
ちくま学芸文庫の数学と物理関係(Math & Science)

http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/01/19/1123372
Maxima、すげえじゃん
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/03/28/1350929
横田博史著「はじめてのMaxima」

http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/04/04/1368395
竹内薫さんのMaxima本
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/07/18/1663085
竹内薫著「はじめての数式処理ソフト」

http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/01/20/1126597
Maxima, BCPL, Algol, APL, SNOBOL
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/01/26/1138367
Maxima, KNOPPIX/Math, R, Octaveその他