GRAPE本、伊藤智義著「スーパーコンピューターを20万円で創る」 ― 2008年02月08日 09時43分12秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
---
今から約20年前、手作り、かつ、たった20万円で当時のスーパーコンピュー
タに匹敵する計算能力をもつコンピュータを、コンピュータを作ったこともな
い素人が作ったというので大いに話題になったGRAPE(グレープ)。
GRAPEプロジェクトを発案した杉本大一郎氏から、突然、開発を命じられて
電子回路や半田付けから勉強して、悪戦苦闘の末、GRAPEを作り上げた伊藤智
義氏が当時のことを書いたのが、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087203956/showshotcorne-22/
伊藤智義著「スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書 395G)」
です。
GRAPEが必要とされた当時の天文学の状況、GRAPE開発の秘話を交えて、当時
のことを綴っています。伊藤氏自身の青春回顧録にもなっています。
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/01/28/2584521
ロボット、画像認識、音声認識関連本
で書いたように、いま、パソコンを自作することが非常に薄っぺらで軽いもの
になっています。
しかし、GRAPEの開発では、自分で回路図を描いて、部品を集めて、半田付
けをして、基本ソフトを書いてと、全部、ほんとに手作り。
いかにして、たった20万円でスーパーコンピュータが作れたか。そのトリッ
クなどは、本書を読んでください。
苦労は多かったけれど、いまより、ミョーに楽しそうなんですよね。読むと
子供のころ初めて半田付けして半田の煙にのけぞったり、エッチングでプリン
ト基板を作ったら、パターンの線がちょっとぎざぎざしてたり、エッチング液
をどこに捨てていいかわからず、庭の隅に捨てたら、そこらの草花が全部枯れ
て、父からそれは雑草が生えているこの辺に捨てろと叱られたり。\(^O^)/
いろいろ自分のことも思い出して、読んでいて懐かしくもわくわくしました。
伊藤氏は、ヤングジャンプに連載されていた「栄光なき天才たち」の原作者
としても知られていますが、これが、在学中のことで、学生なのに、一時、年
収1000万円以上あったそうですが、それを捨てて、いまは研究者になっていま
す。
一点、不満を述べるとすれば、自伝的内容であるにも関わらず、三人称で書
いてあること。これは、おれは、物書きとして反則だと思う。
というのは、GRAPE開発チーム内での人間関係、自分と他の人とのあつれき
なども書いているのに、そしてそれは当事者としての主観でしかあり得ないの
に、一人称で書かずに三人称で書いているから。これでは、客観性を装ってい
ると批判されても仕方がない。
そこに非常に違和感を感じる。伊藤氏は、ノンフィクション作品として楽し
んでほしいと冒頭で述べているが、作品であるならば、なおのこと重大な欠陥
だと、おれは思う。まさか、ノンフィクション作品は三人称記述という単純な
思い込みで、三人称を採用したとは思わないが。
当然、一人称でもノンフィクションは書ける。二人称はノンフィクションだ
ろうがフィクションだろうが難しい。というか、苦労の割に効果がわからない。
少なくとも、おれには。
その他は、当事者しか知りえない秘話もあり、エピソードのつなぎ方もこな
れているし、満足度が高いだけにかえって気になりましたね。
いま、GRAPEはどんどん進化して、GRAPE6になっています。
http://grape.astron.s.u-tokyo.ac.jp/grape/
GRAPEプロジェクト
http://grape.mtk.nao.ac.jp/grape/
GRAPEプロジェクト
この2つは同じ内容のようですね。あれ、後述の講義資料では、
http://www.astrogrape.org/
GRAPE公式サイト
としていますね。ここも内容は同じみたい。
さらに次期GRAPEとしてGRAPE-DRをやっています。
http://grape-dr.adm.s.u-tokyo.ac.jp/
GRAPE-DRプロジェクト
ほかに書いたGRAPE関連ネタは、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/09/14/1796559
「BANG!」「宇宙はどこまで明らかになったのか」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/05/06/1487020
Re: 堀晃「バビロニア・ウェーブ」「地球環」
などありますが、詳しくは、ウェブやブログ上部の検索窓で「GRAPE」をやっ
てください。
■特別付録(笑)
慶応大学の講義でハイパフォーマンスコンピューティングの世界を話したと
きの資料の一部から、
--- ここから ---
●手作りスーパーコンピュータ
GRAPE
GRAPE(GRAvity PipE)
重力の計算専門のスーパーコンピュータ
性能は、240Mflops
制作費は、わずか20万円 当時のスパコンは20億円
杉本大一郎著「手作りスーパーコンピュータへの挑戦」講談社ブルーバックス
杉本氏は東大の宇宙物理学者
国立天文台野辺山観測所の近田義廣氏がアイデア
1989年春、専用計算機の自作を開始し、半年後に1号機が完成
実際の制作は、当時4回生の伊藤智義氏
後、当時大学院生だった牧野淳一郎氏、神戸大学助手だった戎崎俊一氏も
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0405/28/news048.html
「地球シミュレータ」の50倍、2PFLOPSのスパコン国内開発へ
http://brains.te.chiba-u.jp/~itot/study/grape/grape.htm
伊藤智義氏のGRAPEページ
http://www.astrogrape.org/
GRAPEの公式サイト
PACS/PAX
http://www.rccp.tsukuba.ac.jp/ccp-j/cp-pacs.html
超並列計算機 CP-PACS
http://www.rccp.tsukuba.ac.jp/images/pax-hist.jpg
PACS/PAX コンピュータの歴史
--- ここまで ---
今日は、ここまでですが、他にGRAPEに関係する本として、あと2冊、別途紹
介したいと思っています。
GRAPEプロジェクトを始めた杉本大一郎先生のGRAPE本。講義資料にあるブル
ーバックスの
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061329561/showshotcorne-22/
杉本大一郎著「手作りスーパーコンピュータへの挑戦」講談社ブルーバックス
と、いま、実質的にGRAPEプロジェクトのリーダーである牧野淳一郎さんも参
加している
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4535607346/showshotcorne-22/
富阪幸治, 花輪知幸, 牧野淳一郎編「シミュレーション天文学 (シリーズ現代
の天文学 第 14巻)」
これは、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/03/18/1309680
日本天文学会の天文学全集「現代の天文学」刊行開始
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/05/16/1510350
シリーズ現代の天文学 岡村定矩編「人類の住む宇宙」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/09/14/1796559
「BANG!」「宇宙はどこまで明らかになったのか」
で、紹介した現代天文学のシリーズの第14巻。この最後に牧野さんによる
GRAPEの話が出てきます。
あ、「「BANG!」「宇宙はどこまで明らかになったのか」」には、伊藤智義
著「スーパーコンピューターを20万円で創る」の感想はそのうち書くと書いて
ある。2007/09/14だから、もう半年経ってる。おれの時間感覚だと、せいぜい
3ヵ月前なのに。^^;
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/479734007X/showshotcorne-22/
Brian May/Patrick Moore/Chris Lintott著, 渡部潤一監修, 後藤真理子訳
「BANG! 宇宙の起源と進化の不思議 (大型本) 」
は、何度も読み返し、眺め返しているので、いまでも、毎晩ゴロニャン状態で
眺めてます。気持ちが落ち着きますよ。
---
今から約20年前、手作り、かつ、たった20万円で当時のスーパーコンピュー
タに匹敵する計算能力をもつコンピュータを、コンピュータを作ったこともな
い素人が作ったというので大いに話題になったGRAPE(グレープ)。
GRAPEプロジェクトを発案した杉本大一郎氏から、突然、開発を命じられて
電子回路や半田付けから勉強して、悪戦苦闘の末、GRAPEを作り上げた伊藤智
義氏が当時のことを書いたのが、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087203956/showshotcorne-22/
伊藤智義著「スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書 395G)」
です。
GRAPEが必要とされた当時の天文学の状況、GRAPE開発の秘話を交えて、当時
のことを綴っています。伊藤氏自身の青春回顧録にもなっています。
http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/01/28/2584521
ロボット、画像認識、音声認識関連本
で書いたように、いま、パソコンを自作することが非常に薄っぺらで軽いもの
になっています。
しかし、GRAPEの開発では、自分で回路図を描いて、部品を集めて、半田付
けをして、基本ソフトを書いてと、全部、ほんとに手作り。
いかにして、たった20万円でスーパーコンピュータが作れたか。そのトリッ
クなどは、本書を読んでください。
苦労は多かったけれど、いまより、ミョーに楽しそうなんですよね。読むと
子供のころ初めて半田付けして半田の煙にのけぞったり、エッチングでプリン
ト基板を作ったら、パターンの線がちょっとぎざぎざしてたり、エッチング液
をどこに捨てていいかわからず、庭の隅に捨てたら、そこらの草花が全部枯れ
て、父からそれは雑草が生えているこの辺に捨てろと叱られたり。\(^O^)/
いろいろ自分のことも思い出して、読んでいて懐かしくもわくわくしました。
伊藤氏は、ヤングジャンプに連載されていた「栄光なき天才たち」の原作者
としても知られていますが、これが、在学中のことで、学生なのに、一時、年
収1000万円以上あったそうですが、それを捨てて、いまは研究者になっていま
す。
一点、不満を述べるとすれば、自伝的内容であるにも関わらず、三人称で書
いてあること。これは、おれは、物書きとして反則だと思う。
というのは、GRAPE開発チーム内での人間関係、自分と他の人とのあつれき
なども書いているのに、そしてそれは当事者としての主観でしかあり得ないの
に、一人称で書かずに三人称で書いているから。これでは、客観性を装ってい
ると批判されても仕方がない。
そこに非常に違和感を感じる。伊藤氏は、ノンフィクション作品として楽し
んでほしいと冒頭で述べているが、作品であるならば、なおのこと重大な欠陥
だと、おれは思う。まさか、ノンフィクション作品は三人称記述という単純な
思い込みで、三人称を採用したとは思わないが。
当然、一人称でもノンフィクションは書ける。二人称はノンフィクションだ
ろうがフィクションだろうが難しい。というか、苦労の割に効果がわからない。
少なくとも、おれには。
その他は、当事者しか知りえない秘話もあり、エピソードのつなぎ方もこな
れているし、満足度が高いだけにかえって気になりましたね。
いま、GRAPEはどんどん進化して、GRAPE6になっています。
http://grape.astron.s.u-tokyo.ac.jp/grape/
GRAPEプロジェクト
http://grape.mtk.nao.ac.jp/grape/
GRAPEプロジェクト
この2つは同じ内容のようですね。あれ、後述の講義資料では、
http://www.astrogrape.org/
GRAPE公式サイト
としていますね。ここも内容は同じみたい。
さらに次期GRAPEとしてGRAPE-DRをやっています。
http://grape-dr.adm.s.u-tokyo.ac.jp/
GRAPE-DRプロジェクト
ほかに書いたGRAPE関連ネタは、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/09/14/1796559
「BANG!」「宇宙はどこまで明らかになったのか」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/05/06/1487020
Re: 堀晃「バビロニア・ウェーブ」「地球環」
などありますが、詳しくは、ウェブやブログ上部の検索窓で「GRAPE」をやっ
てください。
■特別付録(笑)
慶応大学の講義でハイパフォーマンスコンピューティングの世界を話したと
きの資料の一部から、
--- ここから ---
●手作りスーパーコンピュータ
GRAPE
GRAPE(GRAvity PipE)
重力の計算専門のスーパーコンピュータ
性能は、240Mflops
制作費は、わずか20万円 当時のスパコンは20億円
杉本大一郎著「手作りスーパーコンピュータへの挑戦」講談社ブルーバックス
杉本氏は東大の宇宙物理学者
国立天文台野辺山観測所の近田義廣氏がアイデア
1989年春、専用計算機の自作を開始し、半年後に1号機が完成
実際の制作は、当時4回生の伊藤智義氏
後、当時大学院生だった牧野淳一郎氏、神戸大学助手だった戎崎俊一氏も
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0405/28/news048.html
「地球シミュレータ」の50倍、2PFLOPSのスパコン国内開発へ
http://brains.te.chiba-u.jp/~itot/study/grape/grape.htm
伊藤智義氏のGRAPEページ
http://www.astrogrape.org/
GRAPEの公式サイト
PACS/PAX
http://www.rccp.tsukuba.ac.jp/ccp-j/cp-pacs.html
超並列計算機 CP-PACS
http://www.rccp.tsukuba.ac.jp/images/pax-hist.jpg
PACS/PAX コンピュータの歴史
--- ここまで ---
今日は、ここまでですが、他にGRAPEに関係する本として、あと2冊、別途紹
介したいと思っています。
GRAPEプロジェクトを始めた杉本大一郎先生のGRAPE本。講義資料にあるブル
ーバックスの
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061329561/showshotcorne-22/
杉本大一郎著「手作りスーパーコンピュータへの挑戦」講談社ブルーバックス
と、いま、実質的にGRAPEプロジェクトのリーダーである牧野淳一郎さんも参
加している
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4535607346/showshotcorne-22/
富阪幸治, 花輪知幸, 牧野淳一郎編「シミュレーション天文学 (シリーズ現代
の天文学 第 14巻)」
これは、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/03/18/1309680
日本天文学会の天文学全集「現代の天文学」刊行開始
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/05/16/1510350
シリーズ現代の天文学 岡村定矩編「人類の住む宇宙」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/09/14/1796559
「BANG!」「宇宙はどこまで明らかになったのか」
で、紹介した現代天文学のシリーズの第14巻。この最後に牧野さんによる
GRAPEの話が出てきます。
あ、「「BANG!」「宇宙はどこまで明らかになったのか」」には、伊藤智義
著「スーパーコンピューターを20万円で創る」の感想はそのうち書くと書いて
ある。2007/09/14だから、もう半年経ってる。おれの時間感覚だと、せいぜい
3ヵ月前なのに。^^;
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/479734007X/showshotcorne-22/
Brian May/Patrick Moore/Chris Lintott著, 渡部潤一監修, 後藤真理子訳
「BANG! 宇宙の起源と進化の不思議 (大型本) 」
は、何度も読み返し、眺め返しているので、いまでも、毎晩ゴロニャン状態で
眺めてます。気持ちが落ち着きますよ。
最近のコメント