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筒井康隆「文学外への飛翔」、小森収「はじめて話すけど…」2008年10月05日 04時02分32秒

ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のtti/salon(筒井康隆会議室)からホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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 下北沢でのパフォーマンスで、ヤノピ(山下洋輔)様のピアノが流れる中、舞
台のスクリーンに筒井作品が次々と映し出されるのをみていて、これは絶対に
読んでないし、持ってもいないと思ったのが、「文学外への飛翔」。
 さっそく買い求めました。小学館文庫版です。
 やはり、圧巻は、冒頭の蜷川幸雄演出のチェーホフ「かもめ」に出演する話。
 「かもめ」の中のトリゴーリンという作家役をやることになって、どういう
役柄か、台詞をどう解釈してどうしゃべるか、構造主義による分析が一番いい
だろうと研究を始めるんですが、これがすごい。
 作家でもあり、戯曲も書き、役者でもある筒井康隆であれば当たり前といえ
ば当たり前だが、読みが深い。尋常ではない。そういうふうに読んでいくのか、
一流の仕事とは、こういうことなのかと驚く。
 しかもその過程を、ギャグやユーモアを交えて、ぐいぐい読ませる文章に仕
立て上げているわけだから、2重にすごい。
 どこぞのと書いても、おれの読者ならすぐわかるから書くが、ビジネス書で
氾濫する知的生産とは名ばかりの白痴的生産とは違い、知的生産とはこういう
ことかと感嘆する。
 そうやって準備して、いざ、稽古に行くと、蜷川さんも翻訳の小田島雄志さ
んも、筒井さんにものすごいことをいう。読者はここで「  」となるので、
括弧の中を埋めよということになるのだが、何をどう言われたかは、本書を読
んでのお楽しみ。
 それもこれも、中学生の頃から演劇にハマり、作家になっても、作家筒井康
隆を演じている役者筒井康隆ですなどといって、作家活動とともに演劇活動も
続け、戯曲も書き、演じてしまう筒井さんへの信頼ならではと思う。

 で、本書のほかの部分も役者筒井康隆に関するエッセイで占められているの
だが、全編を読み終わって感じたこと。
 これ、作家筒井康隆による、役者筒井康隆の構造主義分析じゃないか。
 いや、作家筒井康隆による、作家筒井康隆を演じる役者筒井康隆を通しての
作家筒井康隆の構造主義分析というべきなのか。
 もう、メタがメタしてメタメタで、よーわからん。
 最初からすべてのエッセイがそれを意識して書かれたとは思わない(そうで
あっても不思議はないが)。しかし、「かもめ」の構造主義の分析の話を冒頭
に配置し、以後のエッセイをこう並べてあるのを読むと、「作家筒井康隆によ
る、作家筒井康隆を演じる役者筒井康隆を通しての作家筒井康隆の構造主義分
析」になっておるのかと、あたかも、ばらばらにみえたジグソーパズルのピー
スがぴたりとはまっていく非常な快感を覚える。
 こういうマジックを平気でやってのけてしまう。ここにおれは、作家筒井康
隆の力量と幸運をみる。ゴッド・ブレス・ユーみたいに思い、おれは、全幅の
信頼をおいてしまうのだ。

 高校時代の同級生に、小森収君がいる。彼が、翻訳ミステリなどの世界で敏
腕編集者として活躍していることを知ったのは、「はじめて話すけど… 小森
収インタビュー集」(フリースタイル)を読んでから。彼からは、ぼくがウェブ
やブログを書くようになって数回メールをもらったが、高校卒業以来、実際に
は会ったことがないのだ。
 この本は、「各務三郎が「ミステリマガジン」編集長時代を、皆川博子が少
女時代の読書体験を、三谷幸喜が「作戦もの」の魅力を、法月綸太郎がアント
ニー・バークリーを、石上三登志がミステリの楽しみ方を、松岡和子が戯曲を
翻訳する喜びを、和田誠が戦後のアメリカ文化を、はじめて語ってくれた」と
いう本だが、チェーホフ「かもめ」と関係する話、すなわち、役者と台詞、演
劇と翻訳に関する話がある。それは、松岡和子さんのインタビュー。

 松岡和子さんは、筑摩書房から、シェイクスピア全集を出すなど、戯曲の翻
訳を主にやっていらっしゃる翻訳家。
 そのインタビューの中で、役者は原文を知らないのに誤訳がわかる、翻訳者
の読み込みの浅さを感知してしまうという話が出てくる。
 松岡さんは、できる限り、稽古場に行って役者からの質問を受けるという。
そこで、誤訳だった、読み込みが足りなかったと冷汗をかいた経験が何度もあ
り、それで、「いまや、一回役者の身体を通らないうちに活字にするのは怖い」
と思うほどだそうだ。
 誤訳がわかるときは、役者が、「これ、誤訳でしょう」などとというわけで
はなく、「この言葉と次の言葉にかけて、なにか、こう、気持ちが流れていか
ないんだけど、これは、どういうことなんでしょう」と説明を求めてくるそう
な。そのとき、ちょっと待ってくださいといって、原文を読み直したら、「私
が間違っていた」ということが、たびたびあったそう。
 ハムレットでも、オフィーリアの台詞の中に、ポローニアスの文体が出てく
るという話があって、「to the noble mind」という台詞の「noble mind」が、
オフィーリアのいう言葉としては変だなあと思いつつ、さすがにオフィーリア
に「高貴な者」とは言わせられないので、「品位を尊ぶ者」と訳した。
 そうしたら、松たか子さんが、「私、それ、親に言わされていると思って、
演っています」と。ホントに血の気が引いたそうな。それを聞いていた真田広
之さんが、「ぼくもそれを感じるから、裏に親がいると思って、すぐ「ははあ!
 お前は貞淑か?」と出られると言ったそうで、ホントに役者は恐ろしいと。
 蜷川演出のSRC版「リア王」のエドガー役だったイギリスの役者マイケル・
マロニーにそれをいうと、「気づかなかった。でも、そうに違いない」といっ
て、そこをやるためだけにでも「ハムレット」をもう1回演りたいなどと言い
出したとか、じゃあ、オフィーリアの文体は何だと思って調べたら、前半は I
(私) が主語になっている台詞が皆無。I が出てくるのは、発狂してからなん
だそうだ。そういう書き分けをシェイクスピアはやっていたということだ。
 あれだけ研究され尽くしたかのように思えるシェイクスピアでも、英語ネイ
ティブではない日本人の芝居の舞台から、新発見が出てくるのが面白い。
 ほかにも、シェイクスピアは、食べ物が出たらセックスだと思えとか、いろ
いろ興味深い話題が出ている。

 で、やっとチェーホフのこと。
 チェーホフのことは、重訳の話題の中で出てくる。重訳とは、複数の言語の
翻訳を経ること。たとえば、ロシア語がオリジナルで、それを英語に訳したも
のを日本語に訳したという具合。
 重訳の場合は、オリジナル言語から直接日本語へという、便宜上直行便訳と
勝手に呼ぶが、この直行便訳と重訳のどっちがオリジナルの本質に迫っている
かという問題が出てくる。重訳だと、翻訳者が複数になるので、それぞれの翻
訳者のフィルターがかかる。下手をすると伝言ゲームになる。では、直行便訳
がいいのかといえば、さにあらず。直行便訳の翻訳者が凡庸だと、優れた複数
の翻訳者がからむ重訳に負けることもあるという。
 筒井さんが参考にした小田島雄志訳のチェーホフは、ロシア語から英語、そ
して英語を日本語にという流れで、これは重訳。
 旧ソ連に行ったときに松岡さんが旧ソ連の演劇人と話したら、その人が、チ
ェーホフの英訳は、マイケル・フレインの訳が一番いいと言ったそうな。小田
島さんが訳したのは、そのマイケル・フレイン訳。松岡さんによれば、
「それを、小田島さんという、戯曲翻訳のヴェテランで、役者の生理が分かっ
ている人が訳すんだから、良くないものになるわけがない」
 重訳の話は、さらに続いて、マクベスの話になって、森鴎外の訳は、ドイツ
語からの重訳だった。森鴎外訳は果たしてどうなのかなどという話も出てくる
が、それは本を読んでください。

追伸:
 あ、小森君、えらーい。著者紹介で、福岡県北九州市門司区生まれではなく、
福岡県門司市生まれになっている。そうか。おれらが生まれたときは、まだ、
5市合併の北九州市は生まれてなかったのね。ま、おれは生まれたのは、筑豊
の直方だから、関係ないけど。^^;

http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/wabijo62.html
の乳の詫び状(2002/12/01)に「はじめて話すけど…」の感想を書いていた。
 「ハムレット」の文体の謎なのに、「十二夜」の文体の謎などと書いていて、
ハムレットも十二夜も読んでないのがバレバレだった。\(^O^)/
 さっそく修正。^^;
 いやあ、「文学外の飛翔」から、小森君の本の感想の書き間違い発見にまで
つながるとは。いやあ、読書って楽しいですね。一人センス・オブ・ワンダー
状態で寝られなくなって、これを書きました。\(^O^)/

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4094080341/showshotcorne-22/
筒井康隆「文学外への飛翔」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4939138089/showshotcorne-22/
小森収「はじめて話すけど… 小森収インタビュー集」(フリースタイル)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480033017/showshotcorne-22/
シェイクスピア全集 (1) ハムレット (文庫)
W. シェイクスピア (著), William Shakespeare (原著), 松岡 和子 (翻訳)

追伸その2:
 小森君の書評を読んでいる人がいますね。「みちのくミステリ読み」の
http://teru.cocolog-nifty.com/teru_o/2006/11/post_ec6e.html
小森収の「傑作書評」
から始まる一連のエントリです。

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 大盛