John Alderman(著), Mark Richards(写真), 鴨澤 眞夫(翻訳)「Core Memory―ヴィンテージコンピュータの美」 ― 2008年02月22日 10時05分28秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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オライリージャパンから、今度、歴史的に貴重なコンピュータであるヴィン
テージコンピュータの写真集を出すんだけど、お金もないから、中村さんとこ
で宣伝してくれなどというメールがあって、献本されてきたんだけど、先週も
納品、今週も納品で、年度末だからあれこれ忙しいし、いつ紹介できるかわか
らんよという返事をした。
昨夜、封を開けて本を広げてみたら、即、紹介!\(^O^)/
美しい! 素晴らしい!
その本は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4873113571/showshotcorne-22/
John Alderman(著), Mark Richards(写真), 鴨澤 眞夫(翻訳)「Core Memory
―ヴィンテージコンピュータの美 (大型本)」
です。
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/08/26/1753241
クイーンのブライアン・メイの宇宙本「BANG!」
も、よく3000円で出したなあと思いましたが、本書もフルカラーの大型本でこ
の写真のクォリティでよく3000円台で出しましたねえ。立派と思う。
登場するコンピュータを列挙しておくと、
Z3, ENIAC, UNIVAC 1, Johnniac, コアメモリ
あ、オライリージャパンに行ったら、目次があるじゃん。\(^O^)/
http://www.oreilly.co.jp/books/9784873113579/toc.html
Core Memoryの目次
をご覧ください。
壮観でしょ。おれは、知らないコンピュータがいくつもあった。
日本のコンピュータは、NECのNEAC 2203があるだけですね。ま、欧米中心だ
から仕方がないのか。
冒頭のZ3は、訳者の鴨澤氏が、訳者あとがきで
「最初のデジタルコンピュータは実はENIACではなく、ドイツのZ3だった」
と書いていて、「嘘だろ。最初のデジタルコンピュータは、イギリスのコロッ
サス(Colossus)だろう」と突っ込もうと思ったけど、Z3のページをめくって写
真の説明を読むと納得。
コロッサスは、「電子式」デジタルコンピュータ。Z3は「リレー式」デジタ
ルコンピュータ。よって、デジタルコンピュータとしてはZ3のほうが先。1941
年なんですね。
コロッサスは、イギリス軍の機密で第2次世界大戦後もずっと秘密にされて
いたので、コロッサスを作った人たちの名誉回復が行なわれるまでは、ENIAC
が世界初の電子式デジタルコンピュータだったんです。
参考:
http://ja.wikipedia.org/wiki/Colossus
あと、何度か紹介している一般向けの暗号解説本としては現在ベストである
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4105393022/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで」
文庫は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/410215972X/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読 上巻 (新潮文庫 シ 37-2)」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102159738/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)」
でも、コロッサスのことは出てきます。ドイツの強力な暗号エニグマを解くた
めに。このエニグマ解読に至るストーリーはすごいです。ドイツにやられるポ
ーランドの技術者が、死に物狂いで初期のエニグマを解読するんですが、それ
からは。。。とかね。
これと、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/12/13/2509393
石井茂著「量子暗号 絶対に盗聴されない暗号をつくる」
で紹介した
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282759/showshotcorne-22/
石井茂著「量子暗号 絶対に盗聴されない暗号をつくる」
を読めば、暗号入門として十分すぎるくらいでしょう。
コアメモリは、学生時代、現物を見たことがあります。九州大学工学部情報
工学科には、コアメモリの展示物があったんです。ビーズみたいなものに垂直、
水平に細い線が通っていて、それがびっしり。織物みたい。
Apollo Guidance Computerは、最初、Sunのワークステーションよりよっぽ
ど進んでいた、あのスーパーワークステーションApollo Domainかと思ったら、
そうではなく月に行ったアポロ計画で使われたコンピュータ。
Interface Message Processorは、世界初のルータですね。経済学者の野口
悠紀雄が、シスコのルータを世界初のルータなどという嘘を書いてました。そ
して、そのシスコのルータについても大きな嘘を書いていて、困ったもんです。
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/12/18/2518057
野口悠紀雄のトンデモIT論その2
の続きを書かないとね。その5か6くらいまで書けるかもね。^^;
SuperPaintのページは、コンピュータではなくフレームバッファの基板の写
真。
えっと、以前あったMacintosh用のお絵かきソフトのSuper Paintと勘違いし
ないでくださいね。ここで説明しているのは、Xerox PARCで作られたもの。
以後のお絵かきソフトに決定的な影響を与えたソフト+ハードなんですね。
ツールや色をパレットから選ぶというのもこのSuperPaintから。解説では、
「現代のすべてのペイントプログラム(およびPhotoShopなどのピクセル操作プ
ログラム)の原種」
となっています。
ウォズの直筆サイン入りApple I(本来ローマ数字の1だけで文字化けしそう
なのでIで代用)とか、いかにもヴィンテージで、いいねえ。
でも、Apple II(これも本来ローマ数字だけど、Iを2つで代用)以降のパソ
コンの写真は、どれも外見写真で、それまでの写真と比べるとつまらない。その
分、文章で読ませるけれど。
やっぱ、コードやワイヤがのたくったり、真空管やランプやツマミが並んで
ないと。^^;
カラー抵抗が写真に写っているのをみたとき、あー、昔は、ちゃんとカラー
の帯から、何オームの抵抗かすぐわかったのになあなどと思いました(泣)。
TRS-80もあったよ。ポータブルコンピュータのOsbone 1もある。これさ、も
のすごく重いんだよね(本書の記述では、24ポンド、11kg弱)。こんなのがポー
タブルだなんて、アメリカ人、体力ありすぎ、車社会だしなあと思ったもん。
フランスのマルチメディア端末Minitelもありますね。姿を初めて見た。\(^O^)/
ラストから2番目の初代Macintoshが一番冴えない写真。^^;
キヤノン販売だったかなぁ。最初のMacintoshを売り出したころのチラシや
広告写真では、マックの画面にでかでかと「Hallo!」と表示してあったんです。
「Hello!」のスペルミスで。^^; あの写真を使ったらよかったのに。\(^O^)/
最後は、Googleの最初のサーバマシンの一部。
写真は、いずれも非常にクリアです。大型本だし、ドアップが多いから、迫
力満点!
生物の組織を拡大した顕微鏡写真にみえるようなものもあるし、どれもほん
とに美しい。
そして、初めて開いたとき、インクの匂いがよかった。ああ、官能、恍惚。\(^O^)/
本の装丁として、シャレているのが、ページ番号の振り方。
写真集だから、写真が全面を埋め尽くす見開きの左ページには、ページ番号
なし。よって右ページにだけあるが、それが単純にページ番号が印刷してある
わけじゃない。なるほど、そういう風に読むとページ番号がわかるのかと思う
ようなシャレたやり方。
ぜひ、現物をみてください。
こういう小粋な技をみせられると、やっぱ、デザインって大事だね。デザイ
ンのパワーってあるね。こういうデザイン力があると本のステータスや価値が
上がるもんね。
この1冊があれば、昔話が尽きない。たった50年ちょっとだけど、コンピュ
ータには語るに足る歴史、豊潤なドラマがあることを実感させてくれる1冊。
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標題: Re: John Alderman(著), Mark Richards(写真), 鴨澤 眞夫(翻訳)「Core Memory―ヴィンテージコンピュータの美」
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> カラー抵抗が写真に写っているのをみたとき、あー、昔は、ちゃんとカラー
>の帯から、何オームの抵抗かすぐわかったのになあなどと思いました(泣)。
覚えてるよ。白黒赤青黄緑橙桃紫。それは競輪のユニフォーム
の順番じゃーん。
つばめどん
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オライリージャパンから、今度、歴史的に貴重なコンピュータであるヴィン
テージコンピュータの写真集を出すんだけど、お金もないから、中村さんとこ
で宣伝してくれなどというメールがあって、献本されてきたんだけど、先週も
納品、今週も納品で、年度末だからあれこれ忙しいし、いつ紹介できるかわか
らんよという返事をした。
昨夜、封を開けて本を広げてみたら、即、紹介!\(^O^)/
美しい! 素晴らしい!
その本は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4873113571/showshotcorne-22/
John Alderman(著), Mark Richards(写真), 鴨澤 眞夫(翻訳)「Core Memory
―ヴィンテージコンピュータの美 (大型本)」
です。
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/08/26/1753241
クイーンのブライアン・メイの宇宙本「BANG!」
も、よく3000円で出したなあと思いましたが、本書もフルカラーの大型本でこ
の写真のクォリティでよく3000円台で出しましたねえ。立派と思う。
登場するコンピュータを列挙しておくと、
Z3, ENIAC, UNIVAC 1, Johnniac, コアメモリ
あ、オライリージャパンに行ったら、目次があるじゃん。\(^O^)/
http://www.oreilly.co.jp/books/9784873113579/toc.html
Core Memoryの目次
をご覧ください。
壮観でしょ。おれは、知らないコンピュータがいくつもあった。
日本のコンピュータは、NECのNEAC 2203があるだけですね。ま、欧米中心だ
から仕方がないのか。
冒頭のZ3は、訳者の鴨澤氏が、訳者あとがきで
「最初のデジタルコンピュータは実はENIACではなく、ドイツのZ3だった」
と書いていて、「嘘だろ。最初のデジタルコンピュータは、イギリスのコロッ
サス(Colossus)だろう」と突っ込もうと思ったけど、Z3のページをめくって写
真の説明を読むと納得。
コロッサスは、「電子式」デジタルコンピュータ。Z3は「リレー式」デジタ
ルコンピュータ。よって、デジタルコンピュータとしてはZ3のほうが先。1941
年なんですね。
コロッサスは、イギリス軍の機密で第2次世界大戦後もずっと秘密にされて
いたので、コロッサスを作った人たちの名誉回復が行なわれるまでは、ENIAC
が世界初の電子式デジタルコンピュータだったんです。
参考:
http://ja.wikipedia.org/wiki/Colossus
あと、何度か紹介している一般向けの暗号解説本としては現在ベストである
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4105393022/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで」
文庫は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/410215972X/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読 上巻 (新潮文庫 シ 37-2)」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102159738/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)」
でも、コロッサスのことは出てきます。ドイツの強力な暗号エニグマを解くた
めに。このエニグマ解読に至るストーリーはすごいです。ドイツにやられるポ
ーランドの技術者が、死に物狂いで初期のエニグマを解読するんですが、それ
からは。。。とかね。
これと、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/12/13/2509393
石井茂著「量子暗号 絶対に盗聴されない暗号をつくる」
で紹介した
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282759/showshotcorne-22/
石井茂著「量子暗号 絶対に盗聴されない暗号をつくる」
を読めば、暗号入門として十分すぎるくらいでしょう。
コアメモリは、学生時代、現物を見たことがあります。九州大学工学部情報
工学科には、コアメモリの展示物があったんです。ビーズみたいなものに垂直、
水平に細い線が通っていて、それがびっしり。織物みたい。
Apollo Guidance Computerは、最初、Sunのワークステーションよりよっぽ
ど進んでいた、あのスーパーワークステーションApollo Domainかと思ったら、
そうではなく月に行ったアポロ計画で使われたコンピュータ。
Interface Message Processorは、世界初のルータですね。経済学者の野口
悠紀雄が、シスコのルータを世界初のルータなどという嘘を書いてました。そ
して、そのシスコのルータについても大きな嘘を書いていて、困ったもんです。
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/12/18/2518057
野口悠紀雄のトンデモIT論その2
の続きを書かないとね。その5か6くらいまで書けるかもね。^^;
SuperPaintのページは、コンピュータではなくフレームバッファの基板の写
真。
えっと、以前あったMacintosh用のお絵かきソフトのSuper Paintと勘違いし
ないでくださいね。ここで説明しているのは、Xerox PARCで作られたもの。
以後のお絵かきソフトに決定的な影響を与えたソフト+ハードなんですね。
ツールや色をパレットから選ぶというのもこのSuperPaintから。解説では、
「現代のすべてのペイントプログラム(およびPhotoShopなどのピクセル操作プ
ログラム)の原種」
となっています。
ウォズの直筆サイン入りApple I(本来ローマ数字の1だけで文字化けしそう
なのでIで代用)とか、いかにもヴィンテージで、いいねえ。
でも、Apple II(これも本来ローマ数字だけど、Iを2つで代用)以降のパソ
コンの写真は、どれも外見写真で、それまでの写真と比べるとつまらない。その
分、文章で読ませるけれど。
やっぱ、コードやワイヤがのたくったり、真空管やランプやツマミが並んで
ないと。^^;
カラー抵抗が写真に写っているのをみたとき、あー、昔は、ちゃんとカラー
の帯から、何オームの抵抗かすぐわかったのになあなどと思いました(泣)。
TRS-80もあったよ。ポータブルコンピュータのOsbone 1もある。これさ、も
のすごく重いんだよね(本書の記述では、24ポンド、11kg弱)。こんなのがポー
タブルだなんて、アメリカ人、体力ありすぎ、車社会だしなあと思ったもん。
フランスのマルチメディア端末Minitelもありますね。姿を初めて見た。\(^O^)/
ラストから2番目の初代Macintoshが一番冴えない写真。^^;
キヤノン販売だったかなぁ。最初のMacintoshを売り出したころのチラシや
広告写真では、マックの画面にでかでかと「Hallo!」と表示してあったんです。
「Hello!」のスペルミスで。^^; あの写真を使ったらよかったのに。\(^O^)/
最後は、Googleの最初のサーバマシンの一部。
写真は、いずれも非常にクリアです。大型本だし、ドアップが多いから、迫
力満点!
生物の組織を拡大した顕微鏡写真にみえるようなものもあるし、どれもほん
とに美しい。
そして、初めて開いたとき、インクの匂いがよかった。ああ、官能、恍惚。\(^O^)/
本の装丁として、シャレているのが、ページ番号の振り方。
写真集だから、写真が全面を埋め尽くす見開きの左ページには、ページ番号
なし。よって右ページにだけあるが、それが単純にページ番号が印刷してある
わけじゃない。なるほど、そういう風に読むとページ番号がわかるのかと思う
ようなシャレたやり方。
ぜひ、現物をみてください。
こういう小粋な技をみせられると、やっぱ、デザインって大事だね。デザイ
ンのパワーってあるね。こういうデザイン力があると本のステータスや価値が
上がるもんね。
この1冊があれば、昔話が尽きない。たった50年ちょっとだけど、コンピュ
ータには語るに足る歴史、豊潤なドラマがあることを実感させてくれる1冊。
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標題: Re: John Alderman(著), Mark Richards(写真), 鴨澤 眞夫(翻訳)「Core Memory―ヴィンテージコンピュータの美」
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> カラー抵抗が写真に写っているのをみたとき、あー、昔は、ちゃんとカラー
>の帯から、何オームの抵抗かすぐわかったのになあなどと思いました(泣)。
覚えてるよ。白黒赤青黄緑橙桃紫。それは競輪のユニフォーム
の順番じゃーん。
つばめどん
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