福岡伸一著「プリオン説はほんとうか?」 ― 2007年08月16日 06時26分58秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/07/29/1687840
福岡伸一著「生物と無生物のあいだ」
で紹介した
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061498916/showshotcorne-22/
福岡伸一著「生物と無生物のあいだ」
がベストセラーになっています。
これがいまの福岡伸一の代表作とすれば、出世作は、006年度第37回講談社
出版文化賞科学出版賞受賞を受賞した
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062575043/showshotcorne-22/
福岡伸一著「プリオン説はほんとうか?―タンパク質病原体説をめぐるミステ
リー」(ブルーバックス)
でしょう。
さっき、「Re: 牛肉の安全を再考する~来年、全頭検査が中止に」を書いた
し、これを改めて紹介。
スタンレー・プルシナーが唱えた、BSEなどの病原体がDNAやRNAといった核酸
をもった細菌やウイルスではなくタンパク質であるというプリオン説。プルシ
ナーは、これで、ノーベル賞を単独受賞したわけで、世間ではこれが定説になっ
ているが、それに異を唱えたのが本書。
狂牛病騒動からプリオン説に至る経緯やプリオン説を支持する証拠を前半で
述べ、後半は、でも、プリオン説にもいろいろ弱点があって、どういう弱点が
あり、プリオン説で説明できることは、従来のウイルスより小さいウイルス説
でどう説明できるのかと謎解きが進みます。
全頭検査については、
「感染動物のスクリーニングには、脳の検査は有効だが、早期発見のためには
現時点では行なわれていない抹消のリンパ組織の検査を行うべきだということ
である。全頭検査は、テストの検出感度を上昇させるさまざまな技術改良をこ
そ進めるべきであり、感染源が不明であり、感染牛も発見され続けている現時
点で、緩和すべき合理的根拠は少なくとも国内にはない。全頭検査を緩和する
ことは、感染源の特定のための情報収集にも漏れを作ることになる」(同書133
ページ)
と、緩和には否定的な意見です。
文章もうまいし、構成も見事なので、とってもスリリング。下手なミステリ
ーより面白い。
BSEなどのプリオン病は、読めば読むほど、謎の病気だなと思いますね。
それと、生物の実験は、恐ろしく時間と労力と根気と金がかかりますね。実
験手法もあれこれ解説してあります。そして運がないとすごい発見にはつなが
らないのね。
学生のとき、卒論の実験で、化学の友人たちは、数日かかる実験だったので、
交代で徹夜してデータを取ってたけど、おれら、電気・電子・情報の実験なん
て、瞬間で結果が出るからね。\(^O^)/ それを思い出しました。
プルシナーという人は、相当なやり手、強引、もっといえば悪辣にさえみえ
ますね。そうじゃないとノーベル賞、それも単独受賞なんて取れないんだろう
けど。
それからネーミングセンスというか、マーケティングセンスは研究者にも重
要ですね。
仔細に検討すればプリオン説の弱点はいろいろあっても、おれは、彼がノー
ベル賞が取れたのは、プリオンというキャッチーな名前一発だと思うね。\(^O^)/
プリシナーが発表した論文で、異常型プリオンタンパク質の減少と感染性の
減少の挙動が一致しているようにみえるのは、グラフの横軸(時間軸)を対数に
していたからで、リニアな時間軸にしたら、挙動が一致しないという話もあり
ました。
ネーミングといい、グラフといい、広告屋、マーケッティング屋がよく使う
詐術と一緒だね。\(^O^)/
ネーミング一発で思い出したが、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000TESRSE/showshotcorne-22/
日経サイエンス2007年9月号
に、
http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0709/200709_026.html?PHPSESSID=ab81d856eb0e0c4ca570d5aba40c3bcb
D. カイザー「素粒子宇宙論の誕生」
http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0709/200709_035.html?PHPSESSID=ab81d856eb0e0c4ca570d5aba40c3bcb
佐藤勝彦「宇宙誕生の謎解きに挑む 私が見た素粒子宇宙論の歩み」
がある。
宇宙誕生時のインフレーション理論は、佐藤勝彦先生のほうが先らしいけど、
世界的には、アラン・グースが唱えた説となっている。そうなったのは、グー
スのネーミングセンス。佐藤さんは、指数関数的膨張などといってたのに、ブ
ースは思い切って、インフレーションというネーミングにした。おれには、こ
の一発で理論が広まったとしか思えない。まさにインフレーション。\(^O^)/
こういうのみると、理系の研究者も、電通あたりの広告屋やコピーライター
に頼んで、自分の研究成果、理論を売り出すための演出してもらったほうがい
いんじゃないかと思うね。\(^O^)/
いや、けっこう、マジで。
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/07/29/1687840
福岡伸一著「生物と無生物のあいだ」
で紹介した
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061498916/showshotcorne-22/
福岡伸一著「生物と無生物のあいだ」
がベストセラーになっています。
これがいまの福岡伸一の代表作とすれば、出世作は、006年度第37回講談社
出版文化賞科学出版賞受賞を受賞した
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062575043/showshotcorne-22/
福岡伸一著「プリオン説はほんとうか?―タンパク質病原体説をめぐるミステ
リー」(ブルーバックス)
でしょう。
さっき、「Re: 牛肉の安全を再考する~来年、全頭検査が中止に」を書いた
し、これを改めて紹介。
スタンレー・プルシナーが唱えた、BSEなどの病原体がDNAやRNAといった核酸
をもった細菌やウイルスではなくタンパク質であるというプリオン説。プルシ
ナーは、これで、ノーベル賞を単独受賞したわけで、世間ではこれが定説になっ
ているが、それに異を唱えたのが本書。
狂牛病騒動からプリオン説に至る経緯やプリオン説を支持する証拠を前半で
述べ、後半は、でも、プリオン説にもいろいろ弱点があって、どういう弱点が
あり、プリオン説で説明できることは、従来のウイルスより小さいウイルス説
でどう説明できるのかと謎解きが進みます。
全頭検査については、
「感染動物のスクリーニングには、脳の検査は有効だが、早期発見のためには
現時点では行なわれていない抹消のリンパ組織の検査を行うべきだということ
である。全頭検査は、テストの検出感度を上昇させるさまざまな技術改良をこ
そ進めるべきであり、感染源が不明であり、感染牛も発見され続けている現時
点で、緩和すべき合理的根拠は少なくとも国内にはない。全頭検査を緩和する
ことは、感染源の特定のための情報収集にも漏れを作ることになる」(同書133
ページ)
と、緩和には否定的な意見です。
文章もうまいし、構成も見事なので、とってもスリリング。下手なミステリ
ーより面白い。
BSEなどのプリオン病は、読めば読むほど、謎の病気だなと思いますね。
それと、生物の実験は、恐ろしく時間と労力と根気と金がかかりますね。実
験手法もあれこれ解説してあります。そして運がないとすごい発見にはつなが
らないのね。
学生のとき、卒論の実験で、化学の友人たちは、数日かかる実験だったので、
交代で徹夜してデータを取ってたけど、おれら、電気・電子・情報の実験なん
て、瞬間で結果が出るからね。\(^O^)/ それを思い出しました。
プルシナーという人は、相当なやり手、強引、もっといえば悪辣にさえみえ
ますね。そうじゃないとノーベル賞、それも単独受賞なんて取れないんだろう
けど。
それからネーミングセンスというか、マーケティングセンスは研究者にも重
要ですね。
仔細に検討すればプリオン説の弱点はいろいろあっても、おれは、彼がノー
ベル賞が取れたのは、プリオンというキャッチーな名前一発だと思うね。\(^O^)/
プリシナーが発表した論文で、異常型プリオンタンパク質の減少と感染性の
減少の挙動が一致しているようにみえるのは、グラフの横軸(時間軸)を対数に
していたからで、リニアな時間軸にしたら、挙動が一致しないという話もあり
ました。
ネーミングといい、グラフといい、広告屋、マーケッティング屋がよく使う
詐術と一緒だね。\(^O^)/
ネーミング一発で思い出したが、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000TESRSE/showshotcorne-22/
日経サイエンス2007年9月号
に、
http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0709/200709_026.html?PHPSESSID=ab81d856eb0e0c4ca570d5aba40c3bcb
D. カイザー「素粒子宇宙論の誕生」
http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0709/200709_035.html?PHPSESSID=ab81d856eb0e0c4ca570d5aba40c3bcb
佐藤勝彦「宇宙誕生の謎解きに挑む 私が見た素粒子宇宙論の歩み」
がある。
宇宙誕生時のインフレーション理論は、佐藤勝彦先生のほうが先らしいけど、
世界的には、アラン・グースが唱えた説となっている。そうなったのは、グー
スのネーミングセンス。佐藤さんは、指数関数的膨張などといってたのに、ブ
ースは思い切って、インフレーションというネーミングにした。おれには、こ
の一発で理論が広まったとしか思えない。まさにインフレーション。\(^O^)/
こういうのみると、理系の研究者も、電通あたりの広告屋やコピーライター
に頼んで、自分の研究成果、理論を売り出すための演出してもらったほうがい
いんじゃないかと思うね。\(^O^)/
いや、けっこう、マジで。
コメント
_ ひ ― 2007年08月19日 16時18分01秒
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_ ホットコーナーの舞台裏 - 2008年11月27日 09時04分25秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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講談社ブルーバックスの新刊で、気になる本が出てますね。
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講談社ブルーバックスの新刊で、気になる本が出てますね。
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BSE発生順 国名 BSE vCJD
1 英国 183,880 147
2 アイルランド 1,424 1 (英国滞在歴あり)
3 フランス 914 6 (英国滞在歴あり含)
4 ポルトガル 902 -
5 スイス 454 -
...
14 日本 11 -
...
vCJDの患者数全157人中、英国人147人です。
全頭検査がなくなれば、国内のBSE報告数はほとんど増えなくなる可能性があります。また、国内世論もそのうち環境ホルモンの時のように冷めていくことでしょう。
ちなみにCJD(BSEが原因でない)の患者数は一般的に100万人に1人とされているので、人口1億2000万人として国内の患者数は120人になります。日本で研究するなら、vCJDの原因を探るより、CJDの方が研究予算を多く取れそうです。
(上記数値はOIE:2004/7/9より)