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スティグリッツ経済学と薮下史郎(ショートバージョン)2006年02月16日 00時26分00秒

ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
---
 スティグリッツ入門経済学第2版の薮下史郎が書いた(と思っている)文章に
ついて、あれこれ書いていたら終わらないのでショートバージョンにします。
ロングバージョンは、まだ3分の1くらいなのでそのうち。いつになるかわから
んけど。^^;
 朝ブロの
http://iiyu.asablo.jp/blog/2006/01/07/203037
光文社新書あれこれ
に、英-Ranさんから、コメントがついていた。
 英-Ranさんからは、2年前に経済学関係のメールを頂戴して、紹介しようと
思ってそのまま。すみません。スティグリッツ経済学についても書こうと思っ
ていながら、そのまま。すみません。

 今日書くのは、英-Ranさんの「藪下先生の文章のどこらへんの記述に問題を
感じたのでしょうか。特に問題のあるような記載は見つからなかったので、お
教えいただけたら幸いです」に答えるもの。

 素材は、
ジェセフ・E・スティグリッツ著、薮下史郎ほか訳「スティグリッツ入門経済
学 第2版」(東洋経済新報社)
 いまはもう
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492313486/showshotcorne-22/ref=nosim
ジェセフ・E・スティグリッツ著、薮下史郎ほか訳「スティグリッツ入門経済
学 第3版」(東洋経済新報社)
が出ていて、第2版はアマゾンじゃ見つからない。だから、以下に書くことの
真偽は、自分で図書館で第2版を調べるなりしてください。

 おれは同時に、スティグリッツのマクロ経済学とミクロ経済学も買って3部
作を揃えたんだけど、最後まで読み通したのは、入門経済学だけ。なんか、こ
ういう経済学、おれ的にいえば経済文学の世界は、もういいと思ったんだね、
当時。\(^O^)/
 こういう経済学は科学じゃないもんね。経済学で曲りなりにも科学的なのは、
ゲームの理論や金融工学、理財工学など数理経済学だけでしょ。それでも、物
理学でいえば、やっとニュートン力学が登場したかどうかのレベル。\(^O^)

 経済文学なんて、所詮、錬金術。\(^O^)/ この錬金術って、金儲けの話
と中世の科学以前の錬金術のシャレになってることはわかっていただける?
 テレビや雑誌にコメンテータで出てきたり、扇情的な単行本を出している経
済学者やエコノミストがやってるのは、競馬の予想屋レベルの経済文学、それ
も出来の悪い文学。そういうのはもう要らない。断っておくが、競馬の予想屋
の世界も奥が深いんだよ。

 さて、本書は、ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツが書いた経済学の
教科書で、全世界で広く読まれているそうだ。この中で、早稲田の薮下史郎が
日本語版にだけある文章をいくつも書いている。
 その中におれが問題だと思っている箇所がある。
 まず、同書200ページ上から10行目あたり。以下のpcは、ほんとはpが小文字
でさらにcが下付きなんだけど、テキストじゃ表現できないので、Pcと書く。
Prも同様。句読点は、「,.」だが面倒なので「、。」のまま。
--- ここから ---
 以上からわかるように、消費者価格をPc, 生産者価格をPr, そして従量税率
をtで表せば、
 Pc = Pr + t
という関係が成り立つことがわかる。
--- ここまで ---

 この文章と数式は、理系の試験なら、大減点。おれの学生でも大減点。先生
によっては0点。下手するとマイナス点。\(^O^)/
 なぜなら、単位の次元がでたらめだから。価格と率という別の次元をもつ単
位を一緒くたにするのは、理系なら考えられない。
 100円 = 95円 + 5%
 こんな式を平気で書く奴を、絶対に信用してはならない。
 単位系や単位の次元の扱いは、基本中の基本として、理系なら厳しくいわれ
てきたはず。だって、単位系や単位の次元を間違うと、ビルは倒れるわ、飛行
機は墜落するわ、原発は爆発するわで、大変なことになる。
 経済学が科学じゃないことが、これだけでもよくわかるし、経済学者って雑
な仕事をしているんだなと思った。こういう人が、早稲田のCOEセンター長な
んだよ。大丈夫かと思わないほうが不思議でしょう?
 これと似た話は、最近、読んだ別の著書の本にもあって、それはまたロング
バージョンで。

 次は、201ページ下から2行目から202ページにかけて。以下でいう図とは、
199ページにある図5-18 タバコ税の経済効果という図のこと。文中のPtrは小
文字のpにtが上付き、rが下付き。
--- ここから ---
 図からもわかるように、政府余剰の増分は民間部門の余剰減少分を△EcErE
の額だけ下回る。これは、民間部門が負う実質的な税負担(=台形PtrPeEErの
面積)が政府に納める税金を上回ってしまうために発生するという意味でしば
しば税の超過負担と呼ばれる。
--- ここまで ---

 文中、台形PtrPeEErの部分が間違い。五角形PtrPtcEcEErじゃないと、図や
それまでの本文の話と整合性がない。

 以上2点、いずれも薮下史郎が書いた部分。もし、おれが間違っているなら、
謝るので指摘してほしい。

 世界で広く読まれている教科書に、日本独自の追加をして学生の理解の助け
にしたいというその心意気は買うが、仕事が雑なら台無し。ノーベル賞受賞者
の本に傷をつけてるんだもんね。
 スティグリッツが書いた部分は、独学でやってみようと読み始めた経済学の
初学者だったから、経済学の教科書としてのよしあしはよくわからなかったが、
さまざまなトピックを扱ったコラムも、なるほど経済学的にはそういう見方を
するのかとわかったりして楽しかったし、読み応えもあり、面白かった。もう
すっかり内容は忘れたけど。\(^O^)/
 それだけに薮下史郎が書いた部分が、残念ではある。もっとプロフェッショ
ナルな仕事をしてほしいね。

 それから、山形浩生さんが、
http://cruel.org/econ/matsubara.html
松原隆一郎へのお返事:ケインズが本当に言ったこと
で、以下のように書いている。
--- ここから ---
スティグリッツの『経済学』の第二版はいい教科書だよ。日本版についている、
日本に関する付記は当然読むべし。第三版はひどいと思うけど。でも、それも
ここの本題じゃない。
--- ここまで ---

 これが入門経済学第2版のことなら、山形さんのこの評価はおれは間違って
いるといいたい。
 第3版はこの前ご祝儀として買っただけでまだ読んでいないが、第2版は以
上述べたように、薮下史郎が書いた「日本に関する付記は当然読むべし。」じ
ゃなくて、「日本に関する付記は当然読むべし。ただし、眉につばをつけて、
雑な仕事に気をつけて」じゃないと足元をすくわれる。

 おれが買ったこの本は、1999年4月15日第1刷、そして2002年3月18日第13刷
というもの。
 おれが驚くのは、これほど定評ある本の間違いが3年間も、そして13刷にも
なっていながら、直ってないこと。これをおれは、学者、エコノミスト、学生、
そして担当編集者、全部ひっくるめて、日本の経済学コミュニティのレベルの
低さと受け取っている。
 だから、日本の経済学はだめなんだと。\(^O^)/