e を使わない小説 ― 2007年12月13日 09時02分36秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のtti/salon(筒井康隆会議室)からホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
2007/11/25に書いたもの。こちらに出すのを忘れていました。
---
量子力学を使った、絶対に盗聴されない暗号として研究が進んでいる量子暗
号の一般向け解説書
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282759/showshotcorne-22/
石井茂著「量子暗号 絶対に盗聴されない暗号をつくる」
を読んでいて、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4105393022/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで」
文庫は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/410215972X/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読 上巻 (新潮文庫 シ 37-2)」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102159738/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)」
を思い出し、その中で、e を使わない小説の話があることを思い出しました。
使えない文字を決めて、作家に制約をかけるということでは、「残像に口紅
を」に似ているかもしれませんね。
「暗号解読」のハードカバーでは、40ページにこの小説のことが出てきます。
--- ここから ---
一九六九年、フランスの作家ジョルジュ・ペレックが二百ページの小説『消
失』を発表したが、この作品には e の文字が一つも含まれていなかったのだ。
それだけでもすごいことだが、イギリスの小説家で評論家でもあるギルバート・
アデアは、なんとやはり e を使わずにこれを英語に翻訳してのけたのである。
--- ここまで ---
日本語の50音を少しずつ使えなくしながら執筆された「残像に口紅を」が
翻訳されるとき、翻訳先言語の文字を少しずつ使えなくしながら、翻訳できる
ものなのでしょうか。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122022878/showshotcorne-22/
筒井康隆著「残像に口紅を (中公文庫)」
2007/11/25に書いたもの。こちらに出すのを忘れていました。
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量子力学を使った、絶対に盗聴されない暗号として研究が進んでいる量子暗
号の一般向け解説書
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282759/showshotcorne-22/
石井茂著「量子暗号 絶対に盗聴されない暗号をつくる」
を読んでいて、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4105393022/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで」
文庫は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/410215972X/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読 上巻 (新潮文庫 シ 37-2)」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102159738/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)」
を思い出し、その中で、e を使わない小説の話があることを思い出しました。
使えない文字を決めて、作家に制約をかけるということでは、「残像に口紅
を」に似ているかもしれませんね。
「暗号解読」のハードカバーでは、40ページにこの小説のことが出てきます。
--- ここから ---
一九六九年、フランスの作家ジョルジュ・ペレックが二百ページの小説『消
失』を発表したが、この作品には e の文字が一つも含まれていなかったのだ。
それだけでもすごいことだが、イギリスの小説家で評論家でもあるギルバート・
アデアは、なんとやはり e を使わずにこれを英語に翻訳してのけたのである。
--- ここまで ---
日本語の50音を少しずつ使えなくしながら執筆された「残像に口紅を」が
翻訳されるとき、翻訳先言語の文字を少しずつ使えなくしながら、翻訳できる
ものなのでしょうか。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122022878/showshotcorne-22/
筒井康隆著「残像に口紅を (中公文庫)」
石井茂著「量子暗号 絶対に盗聴されない暗号をつくる」 ― 2007年12月13日 10時09分24秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
---
石井茂はとうとうやった。廃刊になった日経バイトの生き残りということだ
けでもシンパシーを感じていたが、今回の
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282759/showshotcorne-22/
石井茂著「量子暗号 絶対に盗聴されない暗号をつくる」
は、かつての2冊より、一皮以上もむけた読後感。素晴らしい。
石井茂のかつての2冊とは、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282112/showshotcorne-22/
石井茂著「量子コンピュータへの誘(いざな)い きまぐれな量子でなぜ計算で
きるのか」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282333/showshotcorne-22/
石井茂著「ハイゼンベルクの顕微鏡 不確定性原理は超えられるか」
この2冊についての感想は、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/02/13/1179605
量子コンピュータ入門書
を参照。
その中で紹介した
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4621053752/showshotcorne-22/
根本香絵, 池谷瑠絵著「ようこそ量子 量子コンピュータはなぜ注目されてい
るのか」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062574691/showshotcorne-22/
竹内繁樹著「量子コンピュータ」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4901683233/showshotcorne-22/
古澤明著「量子光学と量子情報科学」
といった人たちが、研究者としてその名前が今回の「量子暗号」に登場するの
もうれしい。これらの本は最前線にいる人たちによって書かれた一般向け入門
書であることがわかるしね。
あれ? 竹内さんの名前あったかな? なかったら、ごめんなさい。本はgrep
できないから再調査してません。^^;
ともかく、今回の「量子暗号」は、量子暗号にきっちりに正面からぐいぐい
斬り込んでいく。かつての2冊は、わき道の話が多くてそこが不満だった。量
子力学の世界を知らない読者には必要な説明だったと思うが、個人的にはそれ
が多すぎて、本来のテーマからするとバランスを欠いているいう印象だった。
ただし、そのわき道の話は歴史的な経緯の話が多いが、知らない話も多かっ
たし、それ単独でも十分に面白いし、興味深い。おれは、これ、石井節と命名
した。命名したからといって、意味はないのですが。←この前命名した「蔵本
由紀の『ですが』添え」\(^O^)/
ただ、おれにとっては過剰な石井節は、本筋からするとペダンティックな感
じがして、石井さんほどの取材力、構想力、筆力をもっていればもったいない。
もっと、どんどんテーマの真ん中に斬り込んでほしいという思いだった。
その思いが満たされたのが本書である。若干出てくる石井節、日本の物理学
やレーザの歴史的な話も、恥ずかしながら知らないことばかり。ただ、今回、
石井節は抑えてあり、それが全体のバランスのよさ、本筋に斬り込む迫力につ
ながっている。
それにしても、量子暗号という言葉の意味がずいぶん変わっているのね。元
々、秘密鍵のやり取りをするとき、盗聴されていたらそのことを絶対的に発見
できるということで、秘密鍵のやり取りに使われるものだと思っていたが、量
子公開鍵暗号なんてものも出てきているのね。本書では、こういう最新の研究
まで網羅してある。
量子暗号の盗聴についていえば、日経サイエンス2007年11月号のUpdate欄に、
「危うし?! 量子暗号」という記事がある。非常に特殊な条件だと、量子暗号
が盗聴できるという話。実際には、その条件の成立はほぼ不可能。
おれ、BB84のこと、勘違いしていた。量子エンタングルメントを使った方式
だと思っていた。不確定性を使った方式だったのね。それに本書で気づいた。
量子エンタングルメント(量子的からみあい、もつれあいともいう)は、「蒸
留」することで強化できるというのも、本書で知った。もちろん、普通の意味
の蒸留ではなくて、量子的な蒸留ですが。しかも、エンタングルメント状態に
ある2つの光子が遠く離れていても、また一緒にする必要はなくて、片一方だ
けで強化できるのね。びっくり。そんなことができるのか。
といっても、100年後に振り返ると、我々が中世の錬金術を振り返るように、
100年前は、こんな原始的な方法でしか量子を操れなかったんだなという話に
なるんだろうね。それまで人類がもてばの話ですが。\(^O^)/
惜しむらくは、この本も索引がない。これだけは減点項目。参考文献はある
けどね。
そんなことは、まあいい。
ともかくいまは、石井茂の量子3部作の完成を、素直に祝福したい。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4105393022/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで」
文庫は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/410215972X/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読 上巻 (新潮文庫 シ 37-2)」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102159738/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)」
を読んだ人は、執筆当時はまだ量子暗号はそれほど進んでいなかったせいもあ
って、他の部分のみっちりきっちり感に比べて、量子暗号の部分があっさりし
た印象をもったと思うが、そこが不満だった人には、石井茂の「量子暗号」は、
無条件にお薦めできる。
「暗号解読」を強力に補完する本である。
一般人が量子暗号について知りたいと思えば、本書は絶対の必読書でしょう。
お薦めです。
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石井茂はとうとうやった。廃刊になった日経バイトの生き残りということだ
けでもシンパシーを感じていたが、今回の
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282759/showshotcorne-22/
石井茂著「量子暗号 絶対に盗聴されない暗号をつくる」
は、かつての2冊より、一皮以上もむけた読後感。素晴らしい。
石井茂のかつての2冊とは、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282112/showshotcorne-22/
石井茂著「量子コンピュータへの誘(いざな)い きまぐれな量子でなぜ計算で
きるのか」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282333/showshotcorne-22/
石井茂著「ハイゼンベルクの顕微鏡 不確定性原理は超えられるか」
この2冊についての感想は、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/02/13/1179605
量子コンピュータ入門書
を参照。
その中で紹介した
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4621053752/showshotcorne-22/
根本香絵, 池谷瑠絵著「ようこそ量子 量子コンピュータはなぜ注目されてい
るのか」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062574691/showshotcorne-22/
竹内繁樹著「量子コンピュータ」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4901683233/showshotcorne-22/
古澤明著「量子光学と量子情報科学」
といった人たちが、研究者としてその名前が今回の「量子暗号」に登場するの
もうれしい。これらの本は最前線にいる人たちによって書かれた一般向け入門
書であることがわかるしね。
あれ? 竹内さんの名前あったかな? なかったら、ごめんなさい。本はgrep
できないから再調査してません。^^;
ともかく、今回の「量子暗号」は、量子暗号にきっちりに正面からぐいぐい
斬り込んでいく。かつての2冊は、わき道の話が多くてそこが不満だった。量
子力学の世界を知らない読者には必要な説明だったと思うが、個人的にはそれ
が多すぎて、本来のテーマからするとバランスを欠いているいう印象だった。
ただし、そのわき道の話は歴史的な経緯の話が多いが、知らない話も多かっ
たし、それ単独でも十分に面白いし、興味深い。おれは、これ、石井節と命名
した。命名したからといって、意味はないのですが。←この前命名した「蔵本
由紀の『ですが』添え」\(^O^)/
ただ、おれにとっては過剰な石井節は、本筋からするとペダンティックな感
じがして、石井さんほどの取材力、構想力、筆力をもっていればもったいない。
もっと、どんどんテーマの真ん中に斬り込んでほしいという思いだった。
その思いが満たされたのが本書である。若干出てくる石井節、日本の物理学
やレーザの歴史的な話も、恥ずかしながら知らないことばかり。ただ、今回、
石井節は抑えてあり、それが全体のバランスのよさ、本筋に斬り込む迫力につ
ながっている。
それにしても、量子暗号という言葉の意味がずいぶん変わっているのね。元
々、秘密鍵のやり取りをするとき、盗聴されていたらそのことを絶対的に発見
できるということで、秘密鍵のやり取りに使われるものだと思っていたが、量
子公開鍵暗号なんてものも出てきているのね。本書では、こういう最新の研究
まで網羅してある。
量子暗号の盗聴についていえば、日経サイエンス2007年11月号のUpdate欄に、
「危うし?! 量子暗号」という記事がある。非常に特殊な条件だと、量子暗号
が盗聴できるという話。実際には、その条件の成立はほぼ不可能。
おれ、BB84のこと、勘違いしていた。量子エンタングルメントを使った方式
だと思っていた。不確定性を使った方式だったのね。それに本書で気づいた。
量子エンタングルメント(量子的からみあい、もつれあいともいう)は、「蒸
留」することで強化できるというのも、本書で知った。もちろん、普通の意味
の蒸留ではなくて、量子的な蒸留ですが。しかも、エンタングルメント状態に
ある2つの光子が遠く離れていても、また一緒にする必要はなくて、片一方だ
けで強化できるのね。びっくり。そんなことができるのか。
といっても、100年後に振り返ると、我々が中世の錬金術を振り返るように、
100年前は、こんな原始的な方法でしか量子を操れなかったんだなという話に
なるんだろうね。それまで人類がもてばの話ですが。\(^O^)/
惜しむらくは、この本も索引がない。これだけは減点項目。参考文献はある
けどね。
そんなことは、まあいい。
ともかくいまは、石井茂の量子3部作の完成を、素直に祝福したい。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4105393022/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで」
文庫は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/410215972X/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読 上巻 (新潮文庫 シ 37-2)」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102159738/showshotcorne-22/
サイモン・シン著, 青木薫訳「暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)」
を読んだ人は、執筆当時はまだ量子暗号はそれほど進んでいなかったせいもあ
って、他の部分のみっちりきっちり感に比べて、量子暗号の部分があっさりし
た印象をもったと思うが、そこが不満だった人には、石井茂の「量子暗号」は、
無条件にお薦めできる。
「暗号解読」を強力に補完する本である。
一般人が量子暗号について知りたいと思えば、本書は絶対の必読書でしょう。
お薦めです。
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