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蔵本由紀著「非線形科学 (集英社新書 408G)」2007年12月07日 09時05分43秒

ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/11/21/2449895
非線形科学、失敗学
で言及した
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087204081/showshotcorne-22/
蔵本由紀著「非線形科学 (集英社新書 408G)」
を読んだ。やはり、吉村さんが面白いという以上読まねばと思って読んだら、
なるほど面白い。これも蒙を啓かれた。

 第1章は、散逸構造の話をなんとかわかってもらおうと、日常のありふれた
現象を使って苦心して説明している。
 散逸構造。崩壊しつつも、ある状態を保つ、あるいは新たなものを創造する
という動的な均衡。これ、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/07/29/1687840
福岡伸一著「生物と無生物のあいだ」
と同じ視点。こういう視点を持つと日常も違って新鮮に見えるだろう。

 第2章からいろいろな現象を採り上げて話が進むが、カルマン渦、レイリー・
ベナール対流は面白い現象。ローレンツ・モデルが出てくるあたりからは、も
うすっかり夢中。
 第3章「パターンの形成」は、個人的には本書の白眉。実に美しい化学反応
が出てくる。3歩歩くと忘れるおれが、何度も何度も復唱してやっと覚えた。

 じゃ、言ってみろ。
 ええと、BZ反応。
 バカー。省略せずにちゃんと言え。
 ええと、何だっけ? なんとかスキー反応。
 バカー。ベルーソフ・ジャボチンスキー反応だ。

 この反応は、発見当時は、当時の化学の常識からしてあり得ない反応だった
ので、ベルーソフは論文掲載拒否ばかりで、以後、失意のままの人生。旧ソ連
だったので西側でもこの反応は知られぬまま。それをジャボチンスキーが再現
して国際会議で西側に紹介したことから、俄然注目を集める。
 名前のインパクトもすごい、掲載されているの写真を見ると、不思議かつ美
しい。

 第4章「リズムと同期」も、ほほぉという話がいくつかあった。例によって
もう忘れたが。というか、もう、ベルーソフ・ジャボチンスキー反応しか覚え
てない。\(^O^)/
 第5章「カオスの世界」、第6章「ゆらぐ自然」あたりになると、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/11/21/2449895
非線形科学、失敗学
で書いたように、すでにあれこれ聞きかじり、読みかじった世界なので、個人
的には前半のほうが面白い本だった。

 最後のエピローグは、非線形科学の位置づけの話になって、思うことがあっ
た。
 このエピローグは、プロローグで自ら書いた非線形科学とは何だという問い
への力強い答になっている。
 たとえば物理学は、素粒子物理学のようにどんどんミクロな世界を追求して
きたが、それだけでは観えてこない世界がある。マクロで複雑なものをそのマ
クロなレベルで丸ごととらえて理解する方法があるのではないか。根っこに素
粒子物理学のようなミクロな根本原理の世界があって、そこから枝分かれして
さまざまな応用の大枝小枝が広がる樹木のイメージを使って、非線形科学は枝
を横に貫くような横断的なものであると、著者は力強く宣言している。
 これ、我々のコンピュータのソフト屋の領域でも、世界のモデル化で同じ話
にぶち当たる。オントロジーのようなある種哲学的な世界認識・記述方法まで
行かなくても、業界のみんなにも馴染み深いオブジェクト指向のレベルでもそ
う。
 たとえば、1つの根源的クラスから派生させていろんなクラスが作り作られ
だが、実際にソフトを作っていると、その派生の木を横に貫くような、派生の
親子関係に縛られないような横断的なものが必要になる。
 それがたとえば、アスペクト志向プログラミングだし、あるいはRubyでいう
とモジュールのインクルードなど。
 世の中、木構造じゃなくてネットワーク構造なのだから、そうなるのは必然
ではあっても、秩序立った強力で成功している世界があると、なかなかその呪
縛から抜け出せないということなのだね。

 最後まで読んでくると、新米研究者だったころの不安、とまどい、右往左往、
ふて腐れの時期。そしてひょんな偶然といっていいきっかけから研究が評価さ
れ、自信を得て、非線形科学に人生を捧げ、世界的な研究者となり、こうして
非線形科学の歩みと自分の歩みを表現豊かに振り返って一般向けの良書として
まとめるまでになった著者、蔵本由紀の人間的な成長と人生を読み取ることが
できて感動した。

 さて、文体上、気づいたことを述べて締めくくろう。文体には、ひとつの癖
がある。
 ある主張なり、説明をした直後に、でも、ほんとは単純な話ではないよとい
う意味で、「~ですが」や「~ではありませんが」といった、やんわりと否定
する一文を添えることが目につくのだ。
 これは細やかな心遣いでもあり、簡単に断言できるほど世の中簡単ではなく、
複雑なのだよ。だから複雑系、非線形科学なのだと、文体そのもので表現して
いるように思える。
 よって、おれをこれを、「蔵本由紀の『ですが』添え」と命名することにす
る。命名したからといって、それで蔵本由紀の全てがわかるわけではないので
すが。←これが「ですが」添え\(^O^)/

 なお、蔵本由紀は、「くらもとゆき」ではなく、「くらもとよしき」であり、
男性。
 最初、女性だと思って最後まで読んで、なるほど、「『ですが』添え」は、
女性らしい心配りだと思っていたほどで、裏表紙の著者紹介で、「よしき」と
読むことがわかり、あれえ?などといって、男性だと思って読み直すとまた感
じが違う。けれど、やっぱり、文体からは女性を想像するなあ。

 ぜひ、述べておきたいのが、本書は参考文献とともに、ちゃんと索引がつい
ていること。新書でも、ちゃんと索引をつけるのは必須のこと。
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/11/21/2449903
平朝彦, 徐垣, 末廣潔, 木下肇著「地球の内部で何が起こっているのか?」
で、索引がないのが惜しいと書いたが、本書はちゃんとある。編集者もがんば
ったのだろう。まえがき、プロローグ、エピローグのどこにも担当編集者の名
前が出てこないのは残念ですが。←「ですが」添え\(^O^)/

 本書を読んだ後にお薦めなのが、
http://www.ton.scphys.kyoto-u.ac.jp/nonlinear/kuramoto-finallecture.pdf

 これ、「蔵本由紀教授 最終講義録 『非線形科学の形成 - その一断面』
 2004年3月12日 京都大学理学部6号館にて」とあるように、蔵本先
生の京大での最終講義の記録。読むと、とっても面白い。本書を読んだ後なら、
意外にすいすい読める。

 ギャグセンスも素晴らしい。
 いきなり、
「何しろ最終講義というのは私初めてですので(笑)勝手が分からないのです」\(^O^)/
 ツカミはOK。\(^O^)/
 それと、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/01/02/1087928
で紹介した米沢富美子先生の名前と昔の手紙なんぞも出てくる。
 おれ、目が、というより脳が誤読したがっていると思ったのが、9ページに
ある「70年代というのはプログレスの黄金時代」という部分。これをおれ、
「70年代というのはプロレスの黄金時代」と読んだ。\(^O^)/
 本書では、散逸構造の提唱者であり、その後の研究者人生に決定的な影響を
与えたプリゴジンを無条件礼賛かのように読めたが、講義録を読むと、プリゴ
ジンにやっていたことを批判的に考えて、噛みついたことで非線形科学をやり
始めたことがわかる。
 「非線形科学」という言葉も、便利なので外向きに使っているが、自分とし
ては自己組織化する自然に興味があるのであって、「線形」に対する「非線形」
には別段興味はないとも述べている。
 最後の質疑応答で、非線形科学が1つの科学ジャンルとしてはもう終わって
いるかのように述べた部分も、本書のエピローグあたりと一見矛盾するように
思えて面白い。
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/10/21/1863127
NHK教育テレビ「日本のSF50年」
に出てくる、筒井さんがかつていっていた「SFの浸透と拡散」と同じことだ。
 非線形科学的思考法や語法が、浸透して拡散しているということ。それはSF
の浸透と拡散によってSFマインドがなくなったということではないのと同様、
複雑な自然に潜む不変構造を探求する姿勢は変わらないということ。

 本書はベストセラーの1つになっているから、「非線形科学」という言葉。
ますます便利に使われるようになるだろう。本書でも指摘があったが、「カタ
ストロフィー」という言葉が、マスコミによって便利に歪んで使われて誤用が
定着したように。

 所詮、男と女は非線形科学。
 おれ、今夜は、麗子と非線形科学。
 今晩のおかずに役立つ非線形科学。
 すくすく子供が育つ非線形科学。
 非線形科学で、肌に10代のハリと潤いを。
 非線形科学で、老後も安心。
 気をつけよう。暗い夜道と非線形科学。

 なんか、いくらでも出てくるな。\(^O^)/
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