吉田武「素数夜曲: 女王陛下のLISP」は、整数論とScheme入門として最高\(^O^)/ 「虚数の情緒」の感想も ― 2012年06月20日 06時57分02秒
ASAHIネット(http://asahi-net.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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献本、ありがとうございます。
来週、九州大学(九大)に講義に行くので、あれこれあって、なかなかここに
書いている余裕がないけど、これは、もう、書くしかないと思った。
東海大学出版会の田志口(たしぐち)さんから、「なんか、きとるよー」と
いうので、開けてびっくり。
吉田武さんの、とんでもない本を出してきた東海大学出版会から、またして
も、とんでもないものが出ます。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4486019245/showshotcorne-22/
素数夜曲: 女王陛下のLISP [単行本]
吉田 武 (著)
これは、旧版を大幅バージョンアップしたもの。
旧版は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4875251629/showshotcorne-22/
素数夜曲―女王の誘惑 [単行本]
吉田 武 (著)
いま、中古品の出品:4¥ 89,956より、というトンデモもない値段になって
いる。大幅改訂の本書が出たから、こんな値段で買う人がいるとは思えないが。
さて、今回の「素数夜曲」。
あなた。蘇州夜曲ならぬ素数夜曲で、女王陛下のLISPですよ!
オビには、でかでかと、
(独学とは再帰なり)
(LISPは数学へと再帰する)
(壮大な附録と共に“独学の書”復活)
と、いきなり、LispのS式が書いてある。\(^O^)/
オビのB面には、
--- ここから ---
本文で語られた初等整数論の基礎が、
附録ではプログラムとして与えられ、
具体的な数値として議論される。
函数型言語の入門書としても最適。
--- ここまで ---
とある。
読まねばの娘の衝動に駆られ、とっさに、ざっくりではあるが、むさぼり読
み、台風4号が上陸し、暴風雨が通過する中、これを書き始め、ほとんど徹夜
した。それでも、興奮していて、眠たくない。たぶん、会社で昼過ぎにばった
り倒れるだろう。\(^O^)/
本書は、なんと、数学の女王たる整数論の楽しい解説と、Lisp(Scheme)を使
ったプログラミングの素晴らしい入門が融合した本になっている。
女王をLispで扱うから、女王陛下のLISPなんだね。
アマゾンにも、おおまかな目次だけは、いまある。
--- ここから ---
目次
第0夜 梟は黄昏に飛翔する
第1夜 素数のメロディ
第2夜 ピラゴラスの調べ
第3夜 自然数のリズム
第4夜 整数のパーティ
第5夜 マエストロの技
第6夜 小数のメリーゴーランド
第7夜 切れ目の無い数へ
第8夜 異次元への飛翔
第9夜 素数はめぐる
付録A プログラミング言語の発見
付録B プログラミング言語の骨格
付録C プログラミング言語の拡張
付録D 女王陛下のLISP
付録E 数表(素数・原始根)
--- ここまで ---
内容紹介がないかと思って、
http://www.press.tokai.ac.jp/top.jsp
東海大学出版会
のサイトに行っても、6月の新刊予定に、書名が載っている程度。
http://www.press.tokai.ac.jp/cgi-bin/view1.cgi
--- ここから ---
『素数夜曲』女王陛下のLISP 2012.6.28刊行予定
吉田 武 著
A5判・上製本・912頁・定価3780円 ISBN978-4-486-01924-4
--- ここまで ---
大学出版部協会に、内容紹介があった。
http://www.ajup-net.com/bd/isbn978-4-486-01924-4.html
素数夜曲 女王陛下のLISP
吉田 武:著
--- ここから ---
数学学習の“全方位独学法”を提供する。数学の女王と讃えられる整数論を主
題とし、その頂に登る為の様々な手法を紹介する。ラムダ計算と函数型言語を
論じて整数論をLISPの方言であるSchemeにより表現し、豊富な図版と挿画で本
質に迫る。
--- ここまで ---
整数論といえば堅苦しく思うかもしれないが、本書の前半は、語りかける口
調、文体で書かれている。それは、この部分が、一般の人たちに、数の面白さ、
数学の美しさを知ってもらう講演会という設定になっているから。ま、カルチ
ャーセンターでの講義みたいなものだと思ってください。
いや、カルチャーセンターでの講義というより、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/10/24/6167402
外村彰、目で見る美しい量子力学、量子力学を見る、ゲージ場を見る
で紹介した、「イギリス王立研究所、金曜講話」みたいなものと思った方が、
雰囲気はいいかな。
例によって、吉田武は、あれやこれや秘術を尽くし、数の不思議をわかりや
すく楽しく説明してくれる。前半だけで、質・量ともに、そこらの本を軽く凌
駕しているが、本書は、後半の「付録A プログラミング言語の発見」から始
まる附録がとんでもない。
ページ数でいえば、前半は、300ページくらいで、後半の附録が540ページく
らいあるが、後半は、プログラミング言語Schemeの非常に優れた入門書になっ
ている。
しかも、単にSchemeのプログラミングができるようになるというだけではな
く、Scheme(Lisp)や関数言語の根底にある理論、λ演算(ラムダ演算)まで、し
っかりわかる作りになっているし、プログラミング一般に通じる抽象化の手法
や数学をベースにしたモデル化手法の優れた解説になっている。
名著SICPを補うものをという構想で書かれたらしいが、これは、おれがいま
まで読んだSchemeの入門書の中で、一番いい。
本書を、Schemeの入門書だと思って買っても損するどころか、大儲け。それ
に加えて、不思議で美しい整数論の話がいっぱいあって、ますます大儲け。
すぐ、買って、むさぼり読みなさい!\(^O^)/
なお、SICPは、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0262510871/showshotcorne-22/
Structure and Interpretation of Computer Programs (MIT Electrical
Engineering and Computer Science) [ペーパーバック]
Harold Abelson (著), Gerald Jay Sussman (著), Julie Sussman (寄稿)
のこと。
SICPの翻訳は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/489471163X/showshotcorne-22/
計算機プログラムの構造と解釈 [単行本]
ジェラルド・ジェイ サスマン (著), ジュリー サスマン (著),
ハロルド エイブルソン (著), Gerald Jay Sussman (原著),
Julie Sussman (原著), Harold Abelson (原著), 和田 英一 (翻訳)
SICPは、これまで何度も紹介してきた。ブログの上部に付けている検索窓で、
SICPと入れて検索してください。
SICPに挫折した人は、本書「素数夜曲」を読むことをお薦めする。
本書でも、SICPは、名著だが、練習問題が多く、それを解いて理解を深めな
いと、その先がよくわからない作りになっていて、それが敷居を高くしている
という指摘がある。
SICPは、MITのプログラミング入門の教科書だから、ガシガシ、手を動かし
て自分で練習問題を解かないといけない作りなのは、ある意味、仕方ない。基
礎作りは、有無を言わさず、反復練習をして、体に感覚が育ち、骨身に染みて
きて、ついには体で分かるようになるまで、集中してがんがんやらないとだめ
だから。
脳だけじゃだめ。体も大変に重要。脳と身体性のバランスです。
とはいっても、プログラミングのプロになるなら別だが、一般の人には、そ
れはつらい。中学生くらいから社会人まで、一般の人がプログラムを書き、動
かすことで、数の不思議、美しさを実感できるようになるには、別のアプロー
チがあるべきだというので、書かれたのが本書だ。
だから、SICPに挫折した人には、ぜひ、薦めたい。
東海大学出版会から出ている、独学するための、吉田さんの分厚い名著シリ
ーズは、このほかに、2冊ある。どちらも、その内容の充実ぶり、記述の丁寧
さ、話題の豊富さ、わかりやすさ、徹底ぶりなど、あきれる力業。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/448601863X/showshotcorne-22/
オイラーの贈物―人類の至宝eiπ=-1を学ぶ (単行本)
吉田 武 (著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4486014855/showshotcorne-22/
虚数の情緒―中学生からの全方位独学法 [単行本]
吉田 武 (著)
「虚数の情緒」の感想は、書くといって書いてなかったから、ここで書く。
この本で、なにより、「おっとろしかこつばい、鮎原さん」なのは、そこら
にある8桁電卓1つで、数学の、というより、算数レベルのことから初めて、
整数、有理数、無理数や虚数や方程式などの中学高校数学の世界を踏破し、そ
の勢いで、物理学の世界に挑戦して、ニュートン力学から量子力学の入門レベ
ルまで、独学してしまうこと。
電卓を使って、読者が自ら手を動かして計算することで、数に対する感覚が
身に付くように、数学に対する身体性を得られるようにしてあるのが素晴らし
い。
数学に限った話ではないが、データや知識だけ脳に入れても、そんなのだめ。
公式の丸暗記や、ハウツーだけじゃ、だめ。体の中で感覚が育ってないと、デー
タや知識は活用できないし、データを大バカな解釈をしたり、ハウツーの適用を
間違えて大失敗をしでかす。
勝間和代に代表される、ああいう連中のカモリーマン向けの新書、ハウツー
本を読んでも、使い物にならないことは、何度も指摘してきた。
勝間和代は、とっくに飽きられ、カツマーと呼ばれたバカたちも姿を消した
だろうが、彼女が話題になったころから指摘してきたように、所詮、その程度
のレベル。数年も保たないもの。
本筋をやらず、基礎をやらず、そんなものに金と時間と労力をかけているか
ら、カモリーマンは、いつまで経ってもカモリーマン。奴隷状態から抜け出せ
る可能性は、非常に低い。
人間のクイズ王に勝ったIBMのワトソンに象徴される、AI(人工知能)化が進
んだコンピュータの本格普及が始まれば、カモリーマンのホワイトカラーは、
クビになっていく。人間としての強みをどこに求めるかという話もしてきた。
カモリーマン本とは対照的に、「虚数の情緒」は、基礎からみっちりやる。
それも基本の基本から、本筋をじっくり徐々にやっていく。中学生でもできる
レベルから、きっちり基礎を作っていけるように、配慮がある。
そして、おれのように、本書をみっちりやらず、つまみ食いしかしない読者
にとっても、ページをめくるだけで、いろんな発見がある。歴史的な話やらあ
れやこれやで、本書は話題が豊富。
一例を挙げると、おれ、放っておいた本書を、ある日たまたま手に取ること
があって、それは、本を整理するため、本棚の中で本書を別の場所に移そうと
したときだったが、ふと、本書の真ん中付近を繙いてみた。
そしたら、あなた、
「半音とは“2の12乗根”の事である」
という文字が目に飛び込んできた。
「おお、そうか、そうか、そうだよね。かつて、楽器を演奏し、いままたピア
ノを習っているのに、なんで、おれ、そんな簡単なことに気づいてなかったん
だ」
と、まさに目から鱗。、
どうして、平均律(一二平均律)のことが出てきたのかと、ページを遡ると、
なんと、純正調音律あり、ピタゴラス音律ありだし、「ウルフ音」って、知ら
なかったよ、いろんなネタを仕込んであるなあと、すでに興奮状態。
なんでまた音律が出てきたのかと、さらにページを遡ると、ここ、第4章は、
無理数の章だった。
で、結局、本の整理を忘れて、第4章を最初から最後まで、吸い込まれるよ
うに読んでしまった。\(^O^)/
この章でも電卓は活躍していて、電卓で各音の振動数(周波数)を計算する。
たとえば、ド(C)の音の完全五度上の音、すなわちソ(G)の音の振動数がどう
なっているかを計算する。すると、この2つの音が、整数の比で表現できる素
直な関係にあることがわかる。さらに、いろいろと電卓で計算すると、ピタゴ
ラス音律も純正調音律も、音楽や楽器にとって、あれこれ不都合があることが
わかる。それが何であるかは本書を読んでいただくとして、人類は、ついに、
一二平均律にたどり着くわけだが、それは、整数比、すなわち、有理数の音階
を捨てて、無理数の音階を使うことを意味していたのだ。それで、
「半音とは“2の12乗根”の事である」
という言葉が出てきたのだ。
ね、とっても興奮するでしょ。
しない? じゃ、興奮しなさい!
第4章の最後は、連分数の話。これも数学の不思議で美しい例。ちなみに、
ブルーバックスでは、連分数の話題だけを扱ったものが最近出た。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062577704/showshotcorne-22/
連分数のふしぎ (ブルーバックス) [新書]
木村 俊一 (著)
それから、「虚数の情緒」の最初のほうを読んだとき、この本、総ルビでや
ってるのかと、びっくりした。実はすべての漢字にルビ(よみがな)をふる総ル
ビではなく、初出の漢字にだけ、ルビをふっていることが読み進めるとわかる。
2回目以降は、ルビなし。だから、最初のほうは、ルビがいっぱいふってある
が、だんだん、少なくなっていく。
思わず、筒井康隆の「残像に口紅を」を連想してしまったが、これ、編集者
や印刷所の人、大変だったのではないか。何より、著者の吉田さん、よくもま
あ、こんなところまで徹底するよねと、感心するやらあきれるやら。
やってくれるぜ、吉田武!と思ったね。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122022878/showshotcorne-22/
残像に口紅を (中公文庫) [文庫]
筒井 康隆 (著)
今回の「素数夜曲」を含め、「オイラーの贈物」「虚数の情緒」の3冊は、
いずれも分厚い本で、値段も数千円はするので、一見、高いように思うかもし
れないが、得られるものを考えれば、バカみたいに安い。圧倒的なコストパフ
ォーマンスのよさといっていい。
1冊700円くらいはするカモリーマン向けのクソな新書を買うくらいなら、
クソ新書のたった3冊から7冊分ほどのお金で、これだけのものが買える。
東海大学出版会もがんばってくれてるなあと思う次第。
書き終わったと思ったら、急に眠くなってきた。\(^O^)/
と思ったら、気温がどんどん上昇。今日30度以上だって。
このところ、「さみー、さみー、サミー・デイビス・ジュニア」な日かと思
ったら、「 あぢー、あぢー、アジスアベバ」な日になったり、気温変化が大
きくて、体調がいまいちなのに、今日は、アジスアベバが近すぎる。\(^O^)/
寝られんわ、これじゃ。
関連:
http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/06/09/5903336
東海大学出版会、「オイラーの贈物」の吉田武さんが復興支援キャンペーン
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/03/21/4961570
吉田武著「オイラーの贈物―人類の至宝eiπ=-1を学ぶ」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/03/26/4972555
吉田武「はじめまして数学」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/06/09/5903336
東海大学出版会、「オイラーの贈物」の吉田武さんが復興支援キャンペーン
http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/07/15/5954150
数とは何か、数学をいかに使うか、パワーズ オブ テン、虚数の情緒
http://iiyu.asablo.jp/blog/2006/12/22/1042009
吉田武「はやぶさ 不死身の探査機と宇宙研の物語」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/01/19/1123371
吉田武著「はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語」その2
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/02/15/4880032
数学の広場、手を動かす幾何学、小平邦彦「幾何への誘い」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/06/02/5893179
リーバー夫妻「数学は世界を変える あなたにとっての現代数学」ほか
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献本、ありがとうございます。
来週、九州大学(九大)に講義に行くので、あれこれあって、なかなかここに
書いている余裕がないけど、これは、もう、書くしかないと思った。
東海大学出版会の田志口(たしぐち)さんから、「なんか、きとるよー」と
いうので、開けてびっくり。
吉田武さんの、とんでもない本を出してきた東海大学出版会から、またして
も、とんでもないものが出ます。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4486019245/showshotcorne-22/
素数夜曲: 女王陛下のLISP [単行本]
吉田 武 (著)
これは、旧版を大幅バージョンアップしたもの。
旧版は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4875251629/showshotcorne-22/
素数夜曲―女王の誘惑 [単行本]
吉田 武 (著)
いま、中古品の出品:4¥ 89,956より、というトンデモもない値段になって
いる。大幅改訂の本書が出たから、こんな値段で買う人がいるとは思えないが。
さて、今回の「素数夜曲」。
あなた。蘇州夜曲ならぬ素数夜曲で、女王陛下のLISPですよ!
オビには、でかでかと、
(独学とは再帰なり)
(LISPは数学へと再帰する)
(壮大な附録と共に“独学の書”復活)
と、いきなり、LispのS式が書いてある。\(^O^)/
オビのB面には、
--- ここから ---
本文で語られた初等整数論の基礎が、
附録ではプログラムとして与えられ、
具体的な数値として議論される。
函数型言語の入門書としても最適。
--- ここまで ---
とある。
読まねばの娘の衝動に駆られ、とっさに、ざっくりではあるが、むさぼり読
み、台風4号が上陸し、暴風雨が通過する中、これを書き始め、ほとんど徹夜
した。それでも、興奮していて、眠たくない。たぶん、会社で昼過ぎにばった
り倒れるだろう。\(^O^)/
本書は、なんと、数学の女王たる整数論の楽しい解説と、Lisp(Scheme)を使
ったプログラミングの素晴らしい入門が融合した本になっている。
女王をLispで扱うから、女王陛下のLISPなんだね。
アマゾンにも、おおまかな目次だけは、いまある。
--- ここから ---
目次
第0夜 梟は黄昏に飛翔する
第1夜 素数のメロディ
第2夜 ピラゴラスの調べ
第3夜 自然数のリズム
第4夜 整数のパーティ
第5夜 マエストロの技
第6夜 小数のメリーゴーランド
第7夜 切れ目の無い数へ
第8夜 異次元への飛翔
第9夜 素数はめぐる
付録A プログラミング言語の発見
付録B プログラミング言語の骨格
付録C プログラミング言語の拡張
付録D 女王陛下のLISP
付録E 数表(素数・原始根)
--- ここまで ---
内容紹介がないかと思って、
http://www.press.tokai.ac.jp/top.jsp
東海大学出版会
のサイトに行っても、6月の新刊予定に、書名が載っている程度。
http://www.press.tokai.ac.jp/cgi-bin/view1.cgi
--- ここから ---
『素数夜曲』女王陛下のLISP 2012.6.28刊行予定
吉田 武 著
A5判・上製本・912頁・定価3780円 ISBN978-4-486-01924-4
--- ここまで ---
大学出版部協会に、内容紹介があった。
http://www.ajup-net.com/bd/isbn978-4-486-01924-4.html
素数夜曲 女王陛下のLISP
吉田 武:著
--- ここから ---
数学学習の“全方位独学法”を提供する。数学の女王と讃えられる整数論を主
題とし、その頂に登る為の様々な手法を紹介する。ラムダ計算と函数型言語を
論じて整数論をLISPの方言であるSchemeにより表現し、豊富な図版と挿画で本
質に迫る。
--- ここまで ---
整数論といえば堅苦しく思うかもしれないが、本書の前半は、語りかける口
調、文体で書かれている。それは、この部分が、一般の人たちに、数の面白さ、
数学の美しさを知ってもらう講演会という設定になっているから。ま、カルチ
ャーセンターでの講義みたいなものだと思ってください。
いや、カルチャーセンターでの講義というより、
http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/10/24/6167402
外村彰、目で見る美しい量子力学、量子力学を見る、ゲージ場を見る
で紹介した、「イギリス王立研究所、金曜講話」みたいなものと思った方が、
雰囲気はいいかな。
例によって、吉田武は、あれやこれや秘術を尽くし、数の不思議をわかりや
すく楽しく説明してくれる。前半だけで、質・量ともに、そこらの本を軽く凌
駕しているが、本書は、後半の「付録A プログラミング言語の発見」から始
まる附録がとんでもない。
ページ数でいえば、前半は、300ページくらいで、後半の附録が540ページく
らいあるが、後半は、プログラミング言語Schemeの非常に優れた入門書になっ
ている。
しかも、単にSchemeのプログラミングができるようになるというだけではな
く、Scheme(Lisp)や関数言語の根底にある理論、λ演算(ラムダ演算)まで、し
っかりわかる作りになっているし、プログラミング一般に通じる抽象化の手法
や数学をベースにしたモデル化手法の優れた解説になっている。
名著SICPを補うものをという構想で書かれたらしいが、これは、おれがいま
まで読んだSchemeの入門書の中で、一番いい。
本書を、Schemeの入門書だと思って買っても損するどころか、大儲け。それ
に加えて、不思議で美しい整数論の話がいっぱいあって、ますます大儲け。
すぐ、買って、むさぼり読みなさい!\(^O^)/
なお、SICPは、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0262510871/showshotcorne-22/
Structure and Interpretation of Computer Programs (MIT Electrical
Engineering and Computer Science) [ペーパーバック]
Harold Abelson (著), Gerald Jay Sussman (著), Julie Sussman (寄稿)
のこと。
SICPの翻訳は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/489471163X/showshotcorne-22/
計算機プログラムの構造と解釈 [単行本]
ジェラルド・ジェイ サスマン (著), ジュリー サスマン (著),
ハロルド エイブルソン (著), Gerald Jay Sussman (原著),
Julie Sussman (原著), Harold Abelson (原著), 和田 英一 (翻訳)
SICPは、これまで何度も紹介してきた。ブログの上部に付けている検索窓で、
SICPと入れて検索してください。
SICPに挫折した人は、本書「素数夜曲」を読むことをお薦めする。
本書でも、SICPは、名著だが、練習問題が多く、それを解いて理解を深めな
いと、その先がよくわからない作りになっていて、それが敷居を高くしている
という指摘がある。
SICPは、MITのプログラミング入門の教科書だから、ガシガシ、手を動かし
て自分で練習問題を解かないといけない作りなのは、ある意味、仕方ない。基
礎作りは、有無を言わさず、反復練習をして、体に感覚が育ち、骨身に染みて
きて、ついには体で分かるようになるまで、集中してがんがんやらないとだめ
だから。
脳だけじゃだめ。体も大変に重要。脳と身体性のバランスです。
とはいっても、プログラミングのプロになるなら別だが、一般の人には、そ
れはつらい。中学生くらいから社会人まで、一般の人がプログラムを書き、動
かすことで、数の不思議、美しさを実感できるようになるには、別のアプロー
チがあるべきだというので、書かれたのが本書だ。
だから、SICPに挫折した人には、ぜひ、薦めたい。
東海大学出版会から出ている、独学するための、吉田さんの分厚い名著シリ
ーズは、このほかに、2冊ある。どちらも、その内容の充実ぶり、記述の丁寧
さ、話題の豊富さ、わかりやすさ、徹底ぶりなど、あきれる力業。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/448601863X/showshotcorne-22/
オイラーの贈物―人類の至宝eiπ=-1を学ぶ (単行本)
吉田 武 (著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4486014855/showshotcorne-22/
虚数の情緒―中学生からの全方位独学法 [単行本]
吉田 武 (著)
「虚数の情緒」の感想は、書くといって書いてなかったから、ここで書く。
この本で、なにより、「おっとろしかこつばい、鮎原さん」なのは、そこら
にある8桁電卓1つで、数学の、というより、算数レベルのことから初めて、
整数、有理数、無理数や虚数や方程式などの中学高校数学の世界を踏破し、そ
の勢いで、物理学の世界に挑戦して、ニュートン力学から量子力学の入門レベ
ルまで、独学してしまうこと。
電卓を使って、読者が自ら手を動かして計算することで、数に対する感覚が
身に付くように、数学に対する身体性を得られるようにしてあるのが素晴らし
い。
数学に限った話ではないが、データや知識だけ脳に入れても、そんなのだめ。
公式の丸暗記や、ハウツーだけじゃ、だめ。体の中で感覚が育ってないと、デー
タや知識は活用できないし、データを大バカな解釈をしたり、ハウツーの適用を
間違えて大失敗をしでかす。
勝間和代に代表される、ああいう連中のカモリーマン向けの新書、ハウツー
本を読んでも、使い物にならないことは、何度も指摘してきた。
勝間和代は、とっくに飽きられ、カツマーと呼ばれたバカたちも姿を消した
だろうが、彼女が話題になったころから指摘してきたように、所詮、その程度
のレベル。数年も保たないもの。
本筋をやらず、基礎をやらず、そんなものに金と時間と労力をかけているか
ら、カモリーマンは、いつまで経ってもカモリーマン。奴隷状態から抜け出せ
る可能性は、非常に低い。
人間のクイズ王に勝ったIBMのワトソンに象徴される、AI(人工知能)化が進
んだコンピュータの本格普及が始まれば、カモリーマンのホワイトカラーは、
クビになっていく。人間としての強みをどこに求めるかという話もしてきた。
カモリーマン本とは対照的に、「虚数の情緒」は、基礎からみっちりやる。
それも基本の基本から、本筋をじっくり徐々にやっていく。中学生でもできる
レベルから、きっちり基礎を作っていけるように、配慮がある。
そして、おれのように、本書をみっちりやらず、つまみ食いしかしない読者
にとっても、ページをめくるだけで、いろんな発見がある。歴史的な話やらあ
れやこれやで、本書は話題が豊富。
一例を挙げると、おれ、放っておいた本書を、ある日たまたま手に取ること
があって、それは、本を整理するため、本棚の中で本書を別の場所に移そうと
したときだったが、ふと、本書の真ん中付近を繙いてみた。
そしたら、あなた、
「半音とは“2の12乗根”の事である」
という文字が目に飛び込んできた。
「おお、そうか、そうか、そうだよね。かつて、楽器を演奏し、いままたピア
ノを習っているのに、なんで、おれ、そんな簡単なことに気づいてなかったん
だ」
と、まさに目から鱗。、
どうして、平均律(一二平均律)のことが出てきたのかと、ページを遡ると、
なんと、純正調音律あり、ピタゴラス音律ありだし、「ウルフ音」って、知ら
なかったよ、いろんなネタを仕込んであるなあと、すでに興奮状態。
なんでまた音律が出てきたのかと、さらにページを遡ると、ここ、第4章は、
無理数の章だった。
で、結局、本の整理を忘れて、第4章を最初から最後まで、吸い込まれるよ
うに読んでしまった。\(^O^)/
この章でも電卓は活躍していて、電卓で各音の振動数(周波数)を計算する。
たとえば、ド(C)の音の完全五度上の音、すなわちソ(G)の音の振動数がどう
なっているかを計算する。すると、この2つの音が、整数の比で表現できる素
直な関係にあることがわかる。さらに、いろいろと電卓で計算すると、ピタゴ
ラス音律も純正調音律も、音楽や楽器にとって、あれこれ不都合があることが
わかる。それが何であるかは本書を読んでいただくとして、人類は、ついに、
一二平均律にたどり着くわけだが、それは、整数比、すなわち、有理数の音階
を捨てて、無理数の音階を使うことを意味していたのだ。それで、
「半音とは“2の12乗根”の事である」
という言葉が出てきたのだ。
ね、とっても興奮するでしょ。
しない? じゃ、興奮しなさい!
第4章の最後は、連分数の話。これも数学の不思議で美しい例。ちなみに、
ブルーバックスでは、連分数の話題だけを扱ったものが最近出た。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062577704/showshotcorne-22/
連分数のふしぎ (ブルーバックス) [新書]
木村 俊一 (著)
それから、「虚数の情緒」の最初のほうを読んだとき、この本、総ルビでや
ってるのかと、びっくりした。実はすべての漢字にルビ(よみがな)をふる総ル
ビではなく、初出の漢字にだけ、ルビをふっていることが読み進めるとわかる。
2回目以降は、ルビなし。だから、最初のほうは、ルビがいっぱいふってある
が、だんだん、少なくなっていく。
思わず、筒井康隆の「残像に口紅を」を連想してしまったが、これ、編集者
や印刷所の人、大変だったのではないか。何より、著者の吉田さん、よくもま
あ、こんなところまで徹底するよねと、感心するやらあきれるやら。
やってくれるぜ、吉田武!と思ったね。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122022878/showshotcorne-22/
残像に口紅を (中公文庫) [文庫]
筒井 康隆 (著)
今回の「素数夜曲」を含め、「オイラーの贈物」「虚数の情緒」の3冊は、
いずれも分厚い本で、値段も数千円はするので、一見、高いように思うかもし
れないが、得られるものを考えれば、バカみたいに安い。圧倒的なコストパフ
ォーマンスのよさといっていい。
1冊700円くらいはするカモリーマン向けのクソな新書を買うくらいなら、
クソ新書のたった3冊から7冊分ほどのお金で、これだけのものが買える。
東海大学出版会もがんばってくれてるなあと思う次第。
書き終わったと思ったら、急に眠くなってきた。\(^O^)/
と思ったら、気温がどんどん上昇。今日30度以上だって。
このところ、「さみー、さみー、サミー・デイビス・ジュニア」な日かと思
ったら、「 あぢー、あぢー、アジスアベバ」な日になったり、気温変化が大
きくて、体調がいまいちなのに、今日は、アジスアベバが近すぎる。\(^O^)/
寝られんわ、これじゃ。
関連:
http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/06/09/5903336
東海大学出版会、「オイラーの贈物」の吉田武さんが復興支援キャンペーン
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/03/21/4961570
吉田武著「オイラーの贈物―人類の至宝eiπ=-1を学ぶ」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/03/26/4972555
吉田武「はじめまして数学」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/06/09/5903336
東海大学出版会、「オイラーの贈物」の吉田武さんが復興支援キャンペーン
http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/07/15/5954150
数とは何か、数学をいかに使うか、パワーズ オブ テン、虚数の情緒
http://iiyu.asablo.jp/blog/2006/12/22/1042009
吉田武「はやぶさ 不死身の探査機と宇宙研の物語」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/01/19/1123371
吉田武著「はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語」その2
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/02/15/4880032
数学の広場、手を動かす幾何学、小平邦彦「幾何への誘い」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/06/02/5893179
リーバー夫妻「数学は世界を変える あなたにとっての現代数学」ほか
東尾理子の告白にダウン症の子を持つ松野明美が複雑胸中吐露 ― 2012年06月20日 06時57分44秒
ASAHIネット(http://asahi-net.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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リンクのみで失礼。
http://www.news-postseven.com/archives/20120607_115327.html
東尾理子の告白にダウン症の子を持つ松野明美が複雑胸中吐露
2012.06.07 16:00
関連:
http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/08/25/6069573
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2009/09/12/4576863
ダウン症のピアニスト越智章仁さんのコンサート
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/03/12/4938888
大平光代「今日を生きる」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2012/02/07/6323977
自閉症の子どもと家族の幸せプロジェクト
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/03/12/4938841
講談社「健康ライブラリーイラスト版」の発達障碍、障碍児教育、うつ関係
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/03/12/4938849
ミネルヴァ書房「発達と障害を考えるシリーズ」コンプリート版
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/03/12/4938857
ミネルヴァ書房「発達障がいと子育てを考える本」
http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/02/18/1192301
ダウン症の日イベント、ミネルヴァ書房、発達と障害を考える本シリーズ
http://iiyu.asablo.jp/blog/2006/03/19/294324
世界ダウン症の日ストリートライブ
http://iiyu.asablo.jp/blog/2006/03/20/296639
Re: 世界ダウン症の日ストリートライブ
http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/06/26/5184773
特別支援教育をすすめる本シリーズ
http://iiyu.asablo.jp/blog/2009/12/10/4749209
障碍児と教育の関連
http://iiyu.asablo.jp/blog/2011/08/25/6069567
2歳で言葉がない子・増えない子、発達障害のいま、アスペ・エルデの会
http://iiyu.asablo.jp/blog/2012/02/10/6328058
アスペルガー症候群・高機能自閉症の人のハローワーク、
当人や周囲が気づいてない、急増する大人の発達障碍
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東尾理子の告白にダウン症の子を持つ松野明美が複雑胸中吐露
2012.06.07 16:00
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