CTM/CTMCP/ガウディ本で気になった訳語その2 ― 2008年03月03日 07時23分45秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/11/14/1908371
CTM/CTMCP/ガウディ本で気になった訳語
の第2弾。
CTMの日本語版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798113468/showshotcorne-22/
セイフ・ハリディ, ピーター・ヴァン・ロイ, 羽永洋訳「コンピュータプログ
ラミングの概念・技法・モデル」
を買ってくださった人がいて、思い出した。
今回は、気になった訳語というより、間違った訳語といっていい。
日本での標準的な訳語は、
concurrent 並行
concurrency 並行性
parallel 並列
parallelism 並列性
ところが、訳者の羽永洋氏は、これを完全に逆に訳している。
concurrent 並列
concurrency 並列性
parallel 並行
parallelism 並行性
これは間違い。最初に述べたものが正しい。
フツー、concurrent(並行)は論理的なことで、parallel(並列)は物理的なこ
とを指す。
たとえば、
http://lise.me.sophia.ac.jp/kktm/Essay/concurrent_parallel.htm
並行,並列,同時,および,分散:
concurrent, parallel, simultaneous and distributed
をどうぞ。
こういう標準的な意味を知っていて読むと、話がえらいギクシャクする。
とりわけ、並行・並列の概念が出てくる、第4章の「宣言的並列性」のあた
りから。
で、原書をみたら、第4章は、「Declarative Concurrentcy」、すなわち
「宣言的並行性」と訳すべきこと。訳書、349ページの注24なんて、
--- ここから ----
「並行性」が並列性の意味で使われている。当時、どちらの概念も「並行性」
といわれた。
-- ここまで ---
となっていて、おれ、何をいってるかわからなかった。\(^O^)/
原文は、
By "parallelism" he means concurrency. In those days the term
parallelism was used to cover both concepts.
表示的意味論の訳は、プログラムの意味論という情報科学でも基礎科学にな
る専門性の高い分野だから、訳者が知らなくてもまだ許せるけど、今回のはア
ウトだね。
この並行・並列の訳し間違いは膨大な数に上るので、増刷時にちょっと修正
というわけにはいかないでしょう。改訂版でも出すときじゃないと。
ということで、自分で上記の読み替えを行なってください。わずらわしいけ
ど、逆に覚えてしまうよりいい。
今回の間違いは、担当編集者も責任大だよ。名前が出てないから、翔泳社に
担当編集者いないのかも。^^;
原書がいい人は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0262220695/showshotcorne-22/
Peter Van Roy and Seif Haridi著「Concepts, Techniques, and Models of
Computer Programming」
をどうぞ。
それと今回見直していて、気づいた間違いがもう1つ。
訳書346ページの「表4.6 同期の分類」が間違い。
-------------------------------------------------------
供給駆動 要求駆動
-------------------------------------------------------
明示的 データフロー実行 遅延実行
暗黙的 ロック、モニタ、等 プログラムされたトリガ
-------------------------------------------------------
となっているが、左端の明示的と暗黙的が逆。原書では正しく、上がImplicit,
下がExplicitになってる。
逆が多いね。\(^O^)/
そんな話はあっても、第4章を読んで改めて思うが、データフロー変数と部
分値をプログラミング言語がサポートしているとすごいね。並行なプログラム
が恐ろしく簡単に見通しよく書けるのね。
これでも、お勉強のために、まだ状態を入れずに宣言的な範囲に抑えて、わ
ざとOz/Mozartの表現力を殺しているんですけどね。
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2007/11/14/1908371
CTM/CTMCP/ガウディ本で気になった訳語
の第2弾。
CTMの日本語版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798113468/showshotcorne-22/
セイフ・ハリディ, ピーター・ヴァン・ロイ, 羽永洋訳「コンピュータプログ
ラミングの概念・技法・モデル」
を買ってくださった人がいて、思い出した。
今回は、気になった訳語というより、間違った訳語といっていい。
日本での標準的な訳語は、
concurrent 並行
concurrency 並行性
parallel 並列
parallelism 並列性
ところが、訳者の羽永洋氏は、これを完全に逆に訳している。
concurrent 並列
concurrency 並列性
parallel 並行
parallelism 並行性
これは間違い。最初に述べたものが正しい。
フツー、concurrent(並行)は論理的なことで、parallel(並列)は物理的なこ
とを指す。
たとえば、
http://lise.me.sophia.ac.jp/kktm/Essay/concurrent_parallel.htm
並行,並列,同時,および,分散:
concurrent, parallel, simultaneous and distributed
をどうぞ。
こういう標準的な意味を知っていて読むと、話がえらいギクシャクする。
とりわけ、並行・並列の概念が出てくる、第4章の「宣言的並列性」のあた
りから。
で、原書をみたら、第4章は、「Declarative Concurrentcy」、すなわち
「宣言的並行性」と訳すべきこと。訳書、349ページの注24なんて、
--- ここから ----
「並行性」が並列性の意味で使われている。当時、どちらの概念も「並行性」
といわれた。
-- ここまで ---
となっていて、おれ、何をいってるかわからなかった。\(^O^)/
原文は、
By "parallelism" he means concurrency. In those days the term
parallelism was used to cover both concepts.
表示的意味論の訳は、プログラムの意味論という情報科学でも基礎科学にな
る専門性の高い分野だから、訳者が知らなくてもまだ許せるけど、今回のはア
ウトだね。
この並行・並列の訳し間違いは膨大な数に上るので、増刷時にちょっと修正
というわけにはいかないでしょう。改訂版でも出すときじゃないと。
ということで、自分で上記の読み替えを行なってください。わずらわしいけ
ど、逆に覚えてしまうよりいい。
今回の間違いは、担当編集者も責任大だよ。名前が出てないから、翔泳社に
担当編集者いないのかも。^^;
原書がいい人は、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0262220695/showshotcorne-22/
Peter Van Roy and Seif Haridi著「Concepts, Techniques, and Models of
Computer Programming」
をどうぞ。
それと今回見直していて、気づいた間違いがもう1つ。
訳書346ページの「表4.6 同期の分類」が間違い。
-------------------------------------------------------
供給駆動 要求駆動
-------------------------------------------------------
明示的 データフロー実行 遅延実行
暗黙的 ロック、モニタ、等 プログラムされたトリガ
-------------------------------------------------------
となっているが、左端の明示的と暗黙的が逆。原書では正しく、上がImplicit,
下がExplicitになってる。
逆が多いね。\(^O^)/
そんな話はあっても、第4章を読んで改めて思うが、データフロー変数と部
分値をプログラミング言語がサポートしているとすごいね。並行なプログラム
が恐ろしく簡単に見通しよく書けるのね。
これでも、お勉強のために、まだ状態を入れずに宣言的な範囲に抑えて、わ
ざとOz/Mozartの表現力を殺しているんですけどね。
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_ ホットコーナーの舞台裏 - 2008年03月07日 07時46分44秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/03/03/2686540
CTM/CTMCP/ガウディ本で気になっ
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/03/03/2686540
CTM/CTMCP/ガウディ本で気になっ
_ ホットコーナーの舞台裏 - 2008年04月16日 02時53分19秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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CTM/CTMCP/ガウディ本で気になっ
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2008/03/03/2686540
CTM/CTMCP/ガウディ本で気になっ
_ ホットコーナーの舞台裏 - 2008年08月30日 16時59分58秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp)のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798113468/showshotcorne-22/
コンピュータ
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コンピュータ
_ ホットコーナーの舞台裏 - 2010年03月01日 01時33分05秒
ASAHIネット(http://www.asahi-net.or.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/02/19/4890951
Lispの神様 竹内郁雄教授の最終
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http://iiyu.asablo.jp/blog/2010/02/19/4890951
Lispの神様 竹内郁雄教授の最終
_ ホットコーナーの舞台裏 - 2011年12月27日 09時23分08秒
ASAHIネット(http://asahi-net.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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まだ、グーグル本が出てますね。
しかも、スティーブン・レヴィ
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まだ、グーグル本が出てますね。
しかも、スティーブン・レヴィ
_ ホットコーナーの舞台裏 - 2014年09月10日 10時09分18秒
ASAHIネット(http://asahi-net.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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オライリー・ジャパンの矢野さん。献本、ありがとうございました
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オライリー・ジャパンの矢野さん。献本、ありがとうございました
_ ホットコーナーの舞台裏 - 2015年04月07日 10時08分25秒
ASAHIネット(http://asahi-net.jp )のjouwa/salonからホットコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~ki4s-nkmr/ )に転載したものから。
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これまで何度も紹介してきた、TAOCP, SICP, CTMCPなどコンピュータサイ
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これまで何度も紹介してきた、TAOCP, SICP, CTMCPなどコンピュータサイ
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